改訂新版 世界大百科事典 「オーエンズ」の意味・わかりやすい解説
オーエンズ
James Cleaveland Owens
生没年:1913-80
アメリカの陸上競技選手。愛称ジェッシー。アラバマ州ダンビルの黒人綿つみ小作人の家に生まれる。少年時代から陸上競技に天才的な能力を発揮し,奨学金でオハイオ州立大学に入学。1935年5月25日,アナーバー(ミシガン州)の競技会で,45分間のうちに,走幅跳び(8m13),220ヤード(20秒3),220ヤード障害(22秒6)の3種目で世界新記録,100ヤードで世界タイ記録(9秒4)を作って,〈トラックの奇跡〉といわれた。36年ベルリンの第11回オリンピック大会では,100m(10秒2),200m(20秒7),走幅跳び(8m06),400mリレー(39秒8)の4種目で金メダリストとなり,〈黒いカモシカ〉と呼ばれた。しかし彼が黒人であったため,ヒトラーは勝者への祝福をすることなく競技場を去った。その後一時プロに転向し,馬と競走するなどしたが,戦後はアメリカ・オリンピック委員会委員に選任された。
執筆者:川本 信正
オーエンズ
Michael Joseph Owens
生没年:1859-1923
アメリカのガラス技術者,経営者。バージニアの炭鉱夫の息子で,ガラス工として育ち,1898年自動製瓶機を発明し,これに付随する4種のアメリカ特許を1895-1904年に取得した。〈オーエンズ・マシン〉と呼ばれるこの装置は,窯から溶融ガラスを取り出し成形,冷却して並べるまでの工程を人手をかりずに行い,1時間に数千本の瓶を製造できる最初の完全自動機械であった。ヨーロッパでは,製瓶業者カルテルがオーエンズ・マシンのヨーロッパ特許を独占買収し,業界全体の自動化の流れを抑える傾向にあった。一方アメリカでは,1903年オーエンズみずからオーエンズ製瓶機会社を組織し,翌年工業生産を開始,副社長となり(1915-23),またリビー・オーエンズ板ガラス会社を設立し,その副社長(1916-23)に就任した。
執筆者:古川 安
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報