翻訳|couch
昼間の休息用寝いすの総称。デイ・ベッドday bedともいう。すでに古代ギリシアの市民家庭においては,食事や談合のときに用いられる四脚式の長い臥面の一端にひじ掛けまたは頭架用の設備と長枕,マットを備えたクリネーと呼ばれる寝いすがあった。ローマ時代にも食堂にブロンズ製のレクトゥスと呼ばれるカウチが用意され,横になった姿勢で食事をした。カウチは古代ギリシア・ローマ以後久しく絶えていたが,イギリスでは16世紀前半,ヘンリー8世の時代に,格式ばった大型ベッドの代りに,日中の休息のため低い背もたれが長いすの一端についたカウチがあらわれた。その後18世紀初めのアン女王の時代まで,四脚または六脚式の基本形式が保持されてきた。フランスには17世紀の初めにイギリスから導入され,17世紀中ごろから六脚または八脚で,バロック様式の豪華な彫刻で飾られ,綴織のマットをのせたカウチがあらわれた。18世紀に入って,ルイ15世時代には曲線形体のヘッドボードとフットボードを備えたロココ様式のものが流行,ルイ16世様式から19世紀のアンピール様式のものは,厳格な古典様式から古代ギリシアの単純な形式のものまで多彩な形式を示した。一方,17世紀後期には,トルコやペルシアの宮廷における会議(ディーワーン)で使われていた厚いクッションを長いすに取り入れて,背もたれとシートを詰物と布地で張り包みにしたディバンdivanが考案された。18世紀にはスツールと二つのベルジェール(安楽いす)を組み合わせた簡便なデュシェス・ブリゼduchesse briséeが貴婦人たちに愛用された。アンピール時代には,メリディアンméridienと呼ぶソファ形式の休息用カウチが流行した。
執筆者:鍵和田 務
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ソファの一種。寄りかかって休息しやすいように、一方の肘(ひじ)掛けが傾斜して大形になっているもの。昼間に気楽に横たわるのに使う。寝台とソファとの中間的な役目をもつ。18世紀ごろからイタリアやフランスで使われ始めた。これと似たものにデイ・ベッドday bedがある。
[加藤 力]
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