腰掛(読み)コシカケ

デジタル大辞泉 「腰掛」の意味・読み・例文・類語

こし‐かけ【腰掛(け)】

腰を掛ける台。いす。
本来希望を達するまでの間、一時ある職や地位に身を置くこと。「郷里に帰るまでの腰掛けに勤める」
江戸城内の番士詰め所
江戸時代評定所奉行所で、訴訟人の控え所。
茶室の外の露地に設けた休憩所
[類語](1椅子ベンチソファー座椅子回転椅子揺り椅子ひじ掛け椅子安楽椅子長椅子寝椅子床几しょうぎ縁台丸椅子止まり木ロッキングチェアデッキチェアスツールカウチ/(2副業サイドワークサイドビジネス

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精選版 日本国語大辞典 「腰掛」の意味・読み・例文・類語

こし‐かけ【腰掛】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 腰を掛けること。また、そのための台。椅子。ベンチ。〔運歩色葉(1548)〕
    1. [初出の実例]「桜の樹の下に据ゑ付けてあったペンキ塗りの腰掛へ腰を掛ける」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二)
  3. 江戸時代、評定所や寺社奉行所、町奉行所などでの訴訟人の控所。たまり。
    1. [初出の実例]「跡式の公事の種を蒔き残し、公儀の腰懸(コシカケ)に町衆を退屈させ」(出典:浮世草子・好色万金丹(1694)三)
  4. ( から転じて ) 明治時代、裁判所をさしていう。
    1. [初出の実例]「それでは今民事の腰掛(コシカケ)へ行きますから、代筆するお人を私が頼んで来て上げませう」(出典:歌舞伎・綴合於伝仮名書(高橋お伝)(1879)七幕)
  5. 江戸時代、江戸城大手門、桜田門など諸門に設けられた番士の詰所。登城した武士の従者の控所ともなった。
    1. [初出の実例]「あばれもの御仕置之事〈略〉登城之供いたし、大手腰掛後ろに供待いたし居候処」(出典:徳川禁令考‐後集・第四・巻三一(1825))
  6. 茶道で、茶室の外の露地に設けられた、参集者の小憩するところ。中くぐりの内と外の二か所に設けられているのが普通で、外露地のものを外腰掛または待合(まちあい)といい、内露地のものを内腰掛または中立(なかだち)という。
    1. [初出の実例]「腰かけに客入て後、亭主水をはこび入べし」(出典:南方録(17C後)覚書)
  7. 年増女の髪の結い方の一つ。
    1. [初出の実例]「としまの風には、しの字わげ、こしかけ、京ぐるなぞがいいふうさ」(出典:洒落本・古契三娼(1787))
  8. 希望する職業や地位などにつくまでの間、一時的に別の職や地位に身をおくこと。また、その職業や地位。〔俚言集覧(1797頃)〕
    1. [初出の実例]「いはば『腰(コシ)かけ』に、そこで働いてゐた家村のせゐだった」(出典:真理の春(1930)〈細田民樹〉ひるしぼむ花)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「腰掛」の意味・わかりやすい解説

腰掛
こしかけ

日本で使われていた昔の座具の総称。それらの多くは背もたれのない台形のもので、儀式に使われた。形によって倚子(いし)、床子(しょうじ)、草墪(そうとん)、胡床(あぐら)、兀子(ごっし)などがあり、身分により使用区分が決まっていた。そのなかで天皇、皇太子が用いたのが御倚子で、現在正倉院清涼殿にその原形がみられる。それには背もたれがつき、西洋の椅子(いす)と同じ形であったため、椅子が輸入された明治以降、腰掛と椅子は同義語として使われるようになった。西洋では背もたれのつくものをチェアchair、ないものをスツールstoolとよび区別しているが、腰掛はスツールにあたると考えてよい。現在の腰掛には1人用の床几(しょうぎ)のようなものから、3~4人が掛ける縁台風のものまで種々ある。茶道では、招客が露地入りして腰掛けて待つ場所を腰掛、または腰掛待合という。

[小原二郎]


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世界大百科事典(旧版)内の腰掛の言及

【腰掛茶屋】より

…江戸時代,評定所や町奉行所,勘定奉行所などに出廷する庶民の控所である〈腰掛(腰懸)〉において営まれた茶屋。訴訟当事者や差添(さしぞえ)の町村役人,公事宿(くじやど)などは奉行所に出頭した旨を届けると,門前に設けられた腰掛(南町奉行所のものは94坪(約310m2)の広さがあった)で白洲(しらす)(法廷)への呼込みを待ったが,その間,必要な書面をしたため,内済(ないさい)(和解)の交渉をすることもあり,ここで食事をとることも許されていた。…

【待合】より

…露地における施設の一。腰掛,袴付(着)(はかまつき),寄付(よりつき)ともいう。《茶湯秘抄》によると〈路地に五畳敷のキヌヌキ有之ナリ〉とみえ,奈良の茶匠,松屋久行は待合のような部屋を設けていた。…

【スツール】より

…背もたれとひじ掛けのない実用的な腰掛け。3~4脚の脚をつけたものと,X脚のものに大きく分けられる。…

※「腰掛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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