日本で使われていた昔の座具の総称。それらの多くは背もたれのない台形のもので、儀式に使われた。形によって倚子(いし)、床子(しょうじ)、草墪(そうとん)、胡床(あぐら)、兀子(ごっし)などがあり、身分により使用区分が決まっていた。そのなかで天皇、皇太子が用いたのが御倚子で、現在正倉院や清涼殿にその原形がみられる。それには背もたれがつき、西洋の椅子(いす)と同じ形であったため、椅子が輸入された明治以降、腰掛と椅子は同義語として使われるようになった。西洋では背もたれのつくものをチェアchair、ないものをスツールstoolとよび区別しているが、腰掛はスツールにあたると考えてよい。現在の腰掛には1人用の床几(しょうぎ)のようなものから、3~4人が掛ける縁台風のものまで種々ある。茶道では、招客が露地入りして腰掛けて待つ場所を腰掛、または腰掛待合という。
[小原二郎]
…江戸時代,評定所や町奉行所,勘定奉行所などに出廷する庶民の控所である〈腰掛(腰懸)〉において営まれた茶屋。訴訟当事者や差添(さしぞえ)の町村役人,公事宿(くじやど)などは奉行所に出頭した旨を届けると,門前に設けられた腰掛(南町奉行所のものは94坪(約310m2)の広さがあった)で白洲(しらす)(法廷)への呼込みを待ったが,その間,必要な書面をしたため,内済(ないさい)(和解)の交渉をすることもあり,ここで食事をとることも許されていた。…
…露地における施設の一。腰掛,袴付(着)(はかまつき),寄付(よりつき)ともいう。《茶湯秘抄》によると〈路地に五畳敷のキヌヌキ有之ナリ〉とみえ,奈良の茶匠,松屋久行は待合のような部屋を設けていた。…
…背もたれとひじ掛けのない実用的な腰掛け。3~4脚の脚をつけたものと,X脚のものに大きく分けられる。…
※「腰掛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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