カバニス(読み)かばにす(英語表記)Pierre Jean Georges Cabanis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カバニス」の意味・わかりやすい解説

カバニス
かばにす
Pierre Jean Georges Cabanis
(1757―1808)

フランス哲学者、医学者。詩人として出発したが、啓蒙(けいもう)思想の影響を受けて、医学と哲学に志す。百科全書派で革命家のミラボーコンドルセの友人で、フランス革命にも深く関与した。パリ大学医学部教授。イデオロジスト観念学派)の代表者で、コンディヤック感覚論を生理学的に発展させた。主著『人間の肉体と精神との関係』(1802)は、夢や精神病などを例にしながら、人間の意識が脳髄作用に還元されることを臨床的に明らかにしようとした。その生理学的心理学の思想は、作家スタンダールなど同時代の知識人に大きな影響を与えた。

[香川知晶]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カバニス」の意味・わかりやすい解説

カバニス
Cabanis, Pierre Jean Georges

[生]1757.6.5. ルイル
[没]1808.5.5. スランクール
フランスの哲学者,医学者。観念学派の中心人物の一人。医学を専門とし,1795年パリ大学教授。大革命の最中に教育計画に関して H.ミラボーと協力,E.コンディヤックと交際。主著『人間の肉体と精神についての論考』 Traité du physique et du moral de l'homme (1802) で名声を博す。知性の機構,観念の意味にとって言語の機構を本質的なものとし,論理実証主義先駆と目されるが,言語はさらに観念の因である感覚の分析を必要とする。脳は印象を消化する胃であり,人間の研究は物理学と生理学に還元されねばならない。また記憶や想像力による神経系統の変化に基づく無意識の存在を主張した。機械論的説明を柱とする彼の哲学は,ラ・メトリをうけて,A.コントから H.テーヌに続く実証主義の源流に位置している。

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