改訂新版 世界大百科事典 「カバマダラ」の意味・わかりやすい解説
カバマダラ
plain tiger
Anosia chrysippus
鱗翅目マダラチョウ科の昆虫。和名は樺色(赤みがかった黄色)のマダラチョウの意味である。開張6.5cm前後。アフリカからインド,マレー半島,オセアニアに分布し,日本では奄美以南に広く分布し,本土にも迷チョウとして飛来し,適当な食草(トウワタ類)があれば秋までに1~2回発生することがある。きわめて暑さに強く,中近東のオアシスにも見られる。高温下では成長が非常に早く,1世代に4週間も要しないので,食草さえ続けば年間十数回の発生が可能である。その反面,寒さには弱い。本種はツマグロヒョウモンとメスアカムラサキの雌の擬態のモデルとみなされる。草地に多く,花に集まる。
同属にはスジグロカバマダラA.genutiaがある。色彩,斑紋は似ているが,翅脈に沿って黒い鱗粉が幅広く現れ,一見して区別される。後翅裏面はオオカバマダラによく似る。開張はカバマダラより約1cm大きい。アフガニスタン以東に分布し,日本ではカバマダラと同様の地域で記録されているが,定住地は宮古諸島で,カバマダラより南にかたよる。食草はガガイモ科ではあるが,日本ではトウワタ類を好まない。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報