日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルビーノ」の意味・わかりやすい解説
カルビーノ
かるびーの
Italo Calvino
(1923―1985)
イタリアの小説家。キューバ生まれ。北イタリアのサン・レモで育つ。第二次世界大戦末期にパルチザンとして戦った経験を基にした処女作の長編『蜘蛛(くも)の巣の小道』(1947)はネオレアリズモの代表的作品に数えられる。文学的にはパベーゼとビットリーニの2人を父とするといわれ、戦後社会への批判と失望とから、単なるリアリズム小説を脱却して、幻想と寓意(ぐうい)を基軸に『まっぷたつの子爵』(1952)、『木のぼり男爵』(1959)などを著し、さらに空想科学の要素も含めて『宇宙喜劇』(1965)、『見えない都市』(1972)を発表した。また、編著『イタリア民話集』(1956)は20世紀の記念碑的作品であり、読み替えの物語『宿命の交わる城』(1973)と『冬の夜に旅人が』(1979)は記号論を先取りした構成になっている。その後、文学・社会論集をまとめた『水に流して』(1980)、連作小説『パロマー』(1983)を発表。アメリカのハーバード大学における連続講義のための原稿『カルビーノの文学講義』(1988)を完成させる直前、急逝した。
[河島英昭]
『河島英昭訳『イタリア民話集』上・下(岩波文庫)』▽『河島英昭訳『まっぷたつの子爵』(1991・晶文社)』▽『米川良夫訳『木のぼり男爵』(1995・白水社)』▽『カルビーノ著、須賀敦子訳『なぜ古典を読むのか』(1997・みすず書房)』▽『米川良夫訳『カルヴィーノの文学講義』(1999・朝日新聞社)』▽『ベルポリーティ著、多木陽介訳『カルヴィーノの眠』(1999・青土社)』▽『和田忠彦訳『水に流して』(2000・朝日新聞社)』