カーボンオフセット(その他表記)carbon offset

翻訳|carbon offset

デジタル大辞泉 「カーボンオフセット」の意味・読み・例文・類語

カーボン‐オフセット(carbon offset)

《offsetは、相殺するもの、埋め合わせ、の意》日常生活や経済活動によって排出される二酸化炭素を、何か別の手段を用いて相殺しようという考え方クリーンエネルギーの開発、森林保護、植林といった事業に投資するなどの方法がある。→温室効果

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カーボンオフセット」の意味・わかりやすい解説

カーボンオフセット
carbon offset

二酸化炭素 CO2やその他の温室効果ガス(CO2相当量〈CO2e〉に換算)の排出量を,別の場所での排出量削減行為(→二酸化炭素排出量の削減)によって相殺(オフセット)する活動。一般的に,炭素削減量が排出する炭素総量に相当する「カーボンニュートラル炭素中立)」の状態が目指される。
二酸化炭素排出量の削減には,みずから削減行為を行なう以外にも方法がある。世界各地の炭素市場では省エネルギー機器の導入や森林経営などの取り組みによる排出削減量や吸収量が「クレジット」と呼ばれる証明書として取り引きされており,炭素市場でこれらのクレジットを購入することによって,排出量を埋め合わせることができる。気候変動枠組条約 UNFCCC京都議定書などの履行制度の一環としても行なわれ,温室効果ガスの排出量削減目標を達成するために,各国が排出枠の取り引きを行なっている。ほかに,ヨーロッパ連合内で排出量を取り引きするヨーロッパ連合域内排出量取引 EU-ETSや,先進国同士が排出量削減や排出除去のプロジェクトを共同で行なう共同実施 JI,先進国が発展途上国内で排出量削減や排出除去のプロジェクトを行なうクリーン開発メカニズム CDMなどを通じて,取り引きすることもできる。企業も自主的にカーボンオフセットのクレジットを購入することができ,大口購入者には,炭素中立を目指すオリンピック競技大会など大規模イベントの運営主体や,グーグル,HSBCホールディングス,イケアなどの企業がある。自主市場は概して規制されていないが,市場の質を評価するための国際規格がいくつか策定されている。日本では,2008年に国内の排出削減や吸収量を認定するオフセット・クレジット J-VER制度(2013年に J-クレジット制度に統合)が,2012年にはカーボン・オフセット制度が開始された。
カーボンオフセットを実施する過程では,削減量の定量化や,当事国の温室効果ガスの削減が実際にどう生じているかの検証など,課題も多い。ある年に炭素量の相殺を目的に植えられた木は,将来も除去してはならないといった,排出量削減の永続性を考慮することも必要である。また,森林破壊が回避される代わりに別の場所が破壊されるといったように,結果的に排出量を増やす「リーケージ(漏れ)」を防ぐことも重要になる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カーボンオフセット」の意味・わかりやすい解説

カーボンオフセット
かーぼんおふせっと
carbon offset

不可避的に排出してしまった二酸化炭素などの温室効果ガスを、別のところで吸収あるいは削減して、排出に見合った分の埋め合わせをしようという概念。二酸化炭素carbon dioxideの排出を相殺offsetするという意味から、カーボンオフセットとよばれる。吸収や削減の手法としては、植林、森林保護、風力など自然エネルギーを活用した発電、非効率な老朽設備の省エネルギー設備への転換、温室効果ガスの地中貯留などがとられる。

 カーボンオフセットは一般に、まず排出する温室効果ガスの量をできるだけ削減し、やむなく排出してしまった量を算出し、これを埋め合わせる手法がとられる。オフセットのための証明書(クレジット)は植林活動などを実施している環境保護団体や民間企業などが発行しており、これをインターネットなどを通じて仲介する団体(プロバイダー)も内外に複数ある。通常、一定量の温室効果ガスの吸収や削減を示す証明書の販売によって得られた資金は温暖化防止策にあてられるため、カーボンオフセットは地球規模で温暖化を防ぐ効果があるとされる。証明書の認定は国連に認められた団体のほか、第三者機関が行っており、日本では環境への負荷が小さなエネルギー(太陽、風、バイオマス、水力など)により発電された電力のもつグリーン電力価値(省エネルギー・二酸化炭素排出削減の価値)を根拠とする「グリーン電力証書」がある。

 1997年にイギリスの非政府植林団体、フューチャーフォレストFuture Forests(現カーボンニュートラル社CarbonNeutral Co.)が始めた運動が最初とされる。日本では2007年(平成19)に一般社団法人日本カーボンオフセット(COJ)が温室効果ガスの相殺サービスを開始した。民間企業にとっては、環境保護に熱心な姿勢をPRできる利点もあり、飲料から旅行、金融商品まで証明書付きの商品が幅広く登場している。一方でカーボンオフセットはあくまで排出分を相殺するだけであることから、排出分の置き換えにすぎないとの批判がある。また、証明書の信頼性がまちまちで、かならずしも温室効果ガス削減につながっていないとの意見もある。

[編集部]

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知恵蔵 「カーボンオフセット」の解説

カーボンオフセット

地球温暖化の原因といわれる二酸化炭素を減らそうとする取り組みのひとつ。日常生活や経済活動の中でどうしても排出してしまう二酸化炭素(カーボン)を、他の場所で行われるCO2削減活動に投資することで埋め合わせ(オフセット)する、というもの。対象となるCO2削減活動は、植林事業、自然エネルギー事業など。イギリスをはじめ欧米で広がりを見せていた取り組みだが、日本でも2008年に入り普及が急速に進み始めた。2月には環境省から「カーボン・オフセットのあり方について(指針)」が出されたほか、企業がCO2の排出量を公表する「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト」も始まっている。
カーボンオフセットの手法としては、大きく2タイプがある。一つは、消費者がカーボンオフセットを導入した商品・サービスを買うと、それ自体がCO2削減行動と見なされたり、金額の一部が自然エネルギーや植林事業に寄付されたりするというもの。現在、食品、旅行、ガス、保険、年賀状などにカーボンオフセットが導入されており、あらゆる分野に広がりを見せつつある。なおこのタイプは「市場流通型」と呼ばれる。
もう一つは、CO2の排出枠を企業や自治体などが直接的に取引するというもの。一般市場を通さないため「特定者間完結型」とも呼ばれる。
日本では08年、300件を超えるカーボンオフセットの取り組みが実施されたと見られている。そのうち半数以上が市場流通型。洞爺湖サミットが開催された夏ごろから導入件数が増えている。カーボンオフセットは法的に決められたものではなく、あくまで自主的な取り組みだが、普及の背景には「京都議定書」による排出量削減目標の達成が大きく関係している。日本では、2012年度までに温室効果ガスを1990年比で6%削減するという目標が設定されたが、CO2排出量は大幅な減少を見せていないのが現状。このような中、京都議定書で提案されている「クリーン開発メカニズム」「排出権取引」が注目されており、自力での削減以外で目標を達成しようという方向性が強まっている。なお、クリーン開発メカニズムはカーボンオフセットの一種でもあり、途上国に温室効果ガス削減技術の協力や資金援助をすることで、自国の温室効果ガス削減分に充当するという仕組みだ。
カーボンオフセットには、市民が気軽に参加でき、市場を通すことで活動が広範囲に広がるというメリットがある一方、削減目標を自力で達成できないことの逃げ道に過ぎない、本当に温室効果ガス削減に結びつくかどうか不透明、という批判もある。

(高野朋美 フリーライター / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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