出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
不可避的に排出してしまった二酸化炭素などの温室効果ガスを、別のところで吸収あるいは削減して、排出に見合った分の埋め合わせをしようという概念。二酸化炭素carbon dioxideの排出を相殺offsetするという意味から、カーボンオフセットとよばれる。吸収や削減の手法としては、植林、森林保護、風力など自然エネルギーを活用した発電、非効率な老朽設備の省エネルギー設備への転換、温室効果ガスの地中貯留などがとられる。
カーボンオフセットは一般に、まず排出する温室効果ガスの量をできるだけ削減し、やむなく排出してしまった量を算出し、これを埋め合わせる手法がとられる。オフセットのための証明書(クレジット)は植林活動などを実施している環境保護団体や民間企業などが発行しており、これをインターネットなどを通じて仲介する団体(プロバイダー)も内外に複数ある。通常、一定量の温室効果ガスの吸収や削減を示す証明書の販売によって得られた資金は温暖化防止策にあてられるため、カーボンオフセットは地球規模で温暖化を防ぐ効果があるとされる。証明書の認定は国連に認められた団体のほか、第三者機関が行っており、日本では環境への負荷が小さなエネルギー(太陽、風、バイオマス、水力など)により発電された電力のもつグリーン電力価値(省エネルギー・二酸化炭素排出削減の価値)を根拠とする「グリーン電力証書」がある。
1997年にイギリスの非政府植林団体、フューチャーフォレストFuture Forests(現カーボンニュートラル社CarbonNeutral Co.)が始めた運動が最初とされる。日本では2007年(平成19)に一般社団法人日本カーボンオフセット(COJ)が温室効果ガスの相殺サービスを開始した。民間企業にとっては、環境保護に熱心な姿勢をPRできる利点もあり、飲料から旅行、金融商品まで証明書付きの商品が幅広く登場している。一方でカーボンオフセットはあくまで排出分を相殺するだけであることから、排出分の置き換えにすぎないとの批判がある。また、証明書の信頼性がまちまちで、かならずしも温室効果ガス削減につながっていないとの意見もある。
[編集部]
(高野朋美 フリーライター / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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