改訂新版 世界大百科事典 「ガガイモ」の意味・わかりやすい解説
ガガイモ
Metaplexis japonica(Thunb.)Makino
《古事記》に少名毘古那神(すくなびこなのかみ)はガガイモの莢(さや)の舟に乗って大国主神(おおくにぬしのかみ)の前に現れたとある。このガガイモ科の植物は長く伸びる多年生のつる草で,日当りのよい平地から低山地の草原で普通にみられる。茎や葉を切ると白い乳液が出る。茎は緑色で,細い軟毛が生えている。葉は対生し,2~5cmの葉柄がある。葉身は基部が心形のやや長い卵形で,長さ5~10cm,幅3~6cm,裏面は緑白色。花期は8月。十数花が密に集まって総状花序をつくる。花は径約1cm,基部が合着して,上部が5裂しており,開花すると星形となる。内面は淡紅紫色で白軟毛が密生し,中央に副花冠と蕊柱(ずいちゆう)がある。副花冠は蕊柱よりも短くて,5裂している。おしべは副花冠に合着しており,めしべをとり囲む。花粉塊は2個,柄があって運搬器からぶら下がる。果実は袋状で長披針形,長さ6~10cm,径1.5~2cm,表面に不ぞろいの小突起があり,熟すと側方で縦に裂け,舟形の2片に割れる。種子は楕円形,扁平で褐色,絹糸状の長い毛がついている。南千島から九州まで,さらに朝鮮,中国に分布する。生薬では果実を乾燥して蘿藦子(らまし)と呼び,中の種子を強精薬とする。また,根や全草も同様の目的に利用される。民間薬として生の葉の汁をはれ物に塗り,また種子の毛を傷口の止血に用いるという。若葉や根茎は食用とされた。種子の毛は綿の代用として印肉,針さしなどにも用いられた。
執筆者:大橋 広好
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報