湯を専用に沸かすための、熱効率のよいガス器具。瞬間的に湯が沸いて出てくる瞬間式といつでも使えるように湯を貯めておく貯湯式がある。
[正木英子]
湯沸かし器についている水栓コックを開いて湯を出す「元止め式」と、湯沸かし器に接続された給湯管のカラン(蛇口)を開いて湯を出す「先止め式」とがある。「元止め式」は小型の湯沸かし器に、「先止め式」は配管して離れた場所にも給湯できる大型のものにそれぞれ使われており、いずれも湯が沸く仕組みは同じである。口火バーナーに点火して水栓を開くと、水圧でダイアフラムが押されてガスバルブが開き、メインバーナーが着火し、熱交換器を通過した水が加熱されて湯になって出てくる。出湯能力は号数で表示され、1分間に水温を水1リットルにつき25℃上昇させる能力を1号としている。したがって水温が15℃の水なら、4号のものは40℃の湯にして1分間に4リットル出せることになる。湯温の調整は自由にできるが、熱くするほど出湯量は減る。70~80℃までに抑えた普通型と、90℃以上の湯が出る熱湯型、必要に応じて出湯能力を切り替えられるタイプなどがある。
また台所や洗面所などで専用に使う4~5号のものを小型ガス湯沸かし器といい、配管して2か所以上に給湯できる6号以上のものを大型ガス湯沸かし器という。さらに各部屋へ配管して放熱器を取り付け、給湯と暖房を1台の大型湯沸かし器で行うセントラル・ヒーティングも、最近は普及してきた。排気の構造には、燃焼に必要な空気を室内から取り入れて屋外に排気する排気筒式と、吸気も排気も屋外で行うバランス式(BF式。Balanced Flueの略)、屋外に設置して屋内に給湯する屋外設置式がある。
[正木英子]
一定の温度の湯を貯湯槽に貯めておいて、いつでも湯を使えるようにした大型ガス湯沸かし器。一度に大量の湯を使用する美容院や飲食店などで広く用いられているが、一般の家庭にはあまり普及していない。湯を使用すると自動的に水が補給され、温度制御装置によってメインバーナーが着火され、一定の湯温に達するとメインバーナーが消える仕組みになっている。排気筒式と屋外設置式があり、配管して使用するが、出湯能力は80~300リットルぐらいまである。
[正木英子]
購入するときは、用途を基準に大きさを決めるが、ガスの種類によって器具のバーナーが異なるので、表示をよく確認して選ぶことがたいせつである。なお、瞬間湯沸かし器は、法令による検査に合格した、合格証のついたもの以外は販売も使用もできないことになっている。
湯沸かし器は瞬間的に熱い湯を沸かすため、小型のものでも大量のガスと酸素を消費し、同時に排出ガスも多く出るので、使用中の換気には十分な注意が必要である。またガス台の真上などに取り付けると酸素が不足して不完全燃焼をおこすおそれがあり、天井や壁に近いと火災の原因にもなるので、設置場所を選ぶこともたいせつである。器具を長もちさせ、安全に使うには、口火バーナーをこまめに消し、3年に一度ぐらいの割合でオーバーホールを頼むとよい。
[正木英子]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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