ガロファロ(その他表記)Raffaele Garofalo

改訂新版 世界大百科事典 「ガロファロ」の意味・わかりやすい解説

ガロファロ
Raffaele Garofalo
生没年:1852-1934

イタリアの刑事法学者。ナポリ貴族家柄に生まれた。弁護士,裁判官など法律実務家としての経歴もあるが,ナポリ大学刑法,刑事訴訟法などの教授も務めた。その主要な業績は,《犯罪学Criminologia》(初版1885,2版1891。フランス,スペインポルトガル,アメリカなどで翻訳された)で,あわれみや誠実さという愛他的感情ないし道徳的感受性に欠ける犯罪を〈自然犯delitto naturale〉とし,この観念を中心として刑事制裁を体系づけた。その思想的背景には,当時の時代精神を反映して,社会的ダーウィニズム(〈社会進化論〉の項参照)がある。C.ロンブローゾE.フェリと並んで,イタリア刑事学派の巨頭の一人である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガロファロ」の意味・わかりやすい解説

ガロファロ
がろふぁろ
Raffaele Garofalo
(1852―1934)

イタリアの刑法学者。ロンブローゾフェリーとともに犯罪人類学派の代表者。ナポリの貴族の家柄の生まれ。治安判事検察官、弁護士を経験したのち、ナポリ大学の刑法、刑事訴訟法教授、さらに王国上院議員となる。犯罪の心理学的考察を出発点とし、刑法実務に関心を払いながら、犯罪の本質を哀れみと誠実という基本的愛他的感情の欠陥によって特徴づけ(自然犯)、立法者の見解や時代によって変わりうる法定犯と区別した。殺人者、暴力的犯罪者、窃盗犯、性犯罪者を四つの基本的犯罪者の種類とし、社会的ダーウィニズムの立場から、その者たちに社会防衛手段が講じられるべきことを主張した。主著『犯罪学』Criminologiaは各国語に翻訳された。

[須々木主一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガロファロ」の意味・わかりやすい解説

ガロファロ
Garofalo, Raffaele

[生]1851.11.18. ナポリ
[没]1934. ナポリ
イタリアの刑法学者。 E.フェリ,C.ロンブローゾと並ぶイタリア学派の創始者の一人。彼の主張は,社会心理学的側面を強調する自然犯説に集約される。自然犯説は犯罪の本質を憐憫の情と誠実性といった愛他的情操の欠如に求め,刑罰を犯人の危険性と社会的適応性に適合させるべきであるとする。著書『刑事学』 Criminologia (1885) は不朽の名著とされ,現行イタリア刑法の立法作業にも参画した。

ガロファロ
Garofalo, Benvenuto da

[生]1481
[没]1559. フェララ
イタリアの画家。本名 Benvenuto Tisio(Tisi)。バサーリによる初期の伝記では,B.ボッカチーノの弟子と伝えられる。作品はラファエロの様式に近いが,色彩および風景の扱いにはドッソ・ドッシの影響が強い。ローマ旅行ののちはミケランジェロ風のマニエリスムの傾向を示す。作品は『マドンナと聖ウィリアムとフランシスコ会聖人たち』 (1517,ロンドン,ナショナル・ギャラリー) ,『ラザロの復活』 (34,フェララ,国立絵画館) など。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android