改訂新版 世界大百科事典 「キツネノボタン」の意味・わかりやすい解説
キツネノボタン
Ranunculus silerifolius Lév.(= R. ternatus Thunb.
R. quelpaertensis(Lév.)Nakai)
山野の湿ったところにごく普通にみられるキンポウゲ科の多年草で,耕地雑草の一つである。葉は3出複葉で小葉身は中裂し,欠刻状鋸歯がある。葉柄の基部は鞘(さや)状に広がる。根生葉をつけた状態で越冬し,春から秋にかけて高さ20~70cmの分枝する茎を出し,花をつける。茎はふつう直立し,有毛または無毛,しばしば紫色を帯びる。花は直径1~1.3cm,萼片は5枚,反曲し,花弁は5枚,黄色,上面の基部に蜜腺がある。おしべは多数。めしべも多数。果実は瘦果(そうか)の集りで,金平糖状。日本,中国,インドシナ,ヒマラヤ地方,スマトラ,ジャワに分布する。
ケキツネノボタンR.cantoniensis DC.は本種によく似た水田の雑草で,二年草。一般に毛が多くて葉の欠刻が鋭い。瘦果の脊縫線の両側に稜があり,先はキツネノボタンのようにはかぎ状に曲がらず,少なくとも根元の方はまっすぐである。
執筆者:田村 道夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報