改訂新版 世界大百科事典 「キンポウゲ」の意味・わかりやすい解説
キンポウゲ
Ranunculus japonicus Thunb.
山野にふつうにみられるキンポウゲ科の多年草。一重のものをウマノアシガタ,八重のものをキンポウゲと分けて呼ぶべきであるという意見もあるが,一般に混用されている。越冬する根生葉は叢生(そうせい)し,葉身は掌状に5~7裂し,基部は心形,葉柄の基部は鞘(さや)状に広がる。春から初夏に高さ30~70cmの直立,分枝する茎を生じ,直径1.5~2cmの黄色の花をつける。茎には開出する毛がある。萼片は緑色で5枚。花弁は黄色で5枚,上面の基部に蜜腺があり,それをおおって小鱗片がある。おしべは多数。めしべも多数で,先端は少し曲がり柱頭がある。花柱は伸長しない。果実は瘦果(そうか)の集りで金平糖状である。日本全域,朝鮮,中国に分布する。ラヌンクリンを含み,皮膚に対し発泡作用があり,毒草とされている。中国では薬用に供されることもある。和名のウマノアシガタ(馬の足形)は葉形にもとづくと言われている。ミヤマキンポウゲR.acerL.var.nipponicus Haraは北海道,本州の高山帯にふつうにみられ,葉の欠刻が強く,茎の毛は斜上ないし伏臥する。基本変種はヨーロッパに分布する。
キンポウゲ属Ranunculus(英名buttercup,crowfoot)にはおよそ600種があり,世界中に広く分布しているが,熱帯では主として高山に生育する。
キンポウゲ科Ranunculaceae
双子葉植物,60属約2500種を含み,世界中に広く分布するが,熱帯には少ない。美しい花をつけるものや,毒草または薬草が多い。多くは草本であるが,木本のものもある。木本の場合,茎はつる性になることが多い。葉は互生,ときに対生または輪生。葉の形はいろいろあるが,単葉の場合は掌状に分裂し基部が心形になることが多く,複葉の場合は通常1~3回3出葉や鳥足状。葉柄の基部は多少とも鞘状に広がる。多年生の草本では,地下茎と根生葉が発達し,地下茎はいわゆる花茎となって,花をつけるときにのみ現れる。ロゼット状の生活形をとるものが多い。花序の形はいろいろあるが,ほとんどは頂花をつける有限花序である。花は目だつものが多く,ふつう両生。子房上位で,萼片,花弁,おしべ,心皮が離生することがこの科の重要な特徴である。しかし,心皮が下部で合着する場合もある。花弁はあるものとないものとがあり,ない場合には萼片が花弁状に着色する。また花弁はふつう蜜を分泌する。萼片より小さい場合はふつう萼片が着色し,萼片より大きな場合は萼片は緑色となり花弁が着色する。果実は多種子の袋果または1種子の瘦果,まれに液果。メギ科,アケビ科,スイレン科などの科に類縁があり,現生する草本性被子植物の中では,もっとも原始的な群に属する。
観賞用として栽培され,園芸品種の作出されている植物群としてはアネモネ,クレマチス,フクジュソウ,ラナンキュラス,デルフィニウム,,ヒエンソウ,トリカブト,クリスマスローズ,ニゲラ,オダマキなどがある。アルカロイドその他の生理的活性の強い物質を含むので,トリカブト属,オウレン属,アキカラマツ,フクジュソウ,シナセンニンソウなどは薬用に供されるものが多い。
執筆者:田村 道夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報