キャベル(その他表記)James Branch Cabell

精選版 日本国語大辞典 「キャベル」の意味・読み・例文・類語

キャベル

  1. ( James Branch Cabell ジェームズ=ブランチ━ ) アメリカ作家風刺機知に富み、幻想的象徴性を特色とする作品を著わす。代表作は「ジャーゲン」。(一八七九‐一九五八

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「キャベル」の意味・わかりやすい解説

キャベル
James Branch Cabell
生没年:1879-1958

アメリカの小説家バージニア州名家の出身で早くから文学に興味をもち,文学と両立できる仕事として名家の系図つくりに専念した。それが力となって全18巻のファンタジー的架空年代記《マニュエル伝》を著した。その中の一巻《ジャーゲン》(1919)は発売当初みだらな書物として発売禁止となり,キャベルの名を広く世に知らしめた。中世の架空の国を舞台に,もと詩人で今は質屋のジャーゲンが,ある日ふとしたことで悪魔に同情示し,悪魔はお礼として恐妻家ジャーゲンの妻の存在を消してくれ,ジャーゲンは1年間夢の女性遍歴に出るが,結局は悪魔に頼んでもとの妻を返してもらうというロマンスである。キャベルの名声は1930年代に下降し,やがてほとんど忘れられてしまった。近年の反リアリズムの流行からやや人気を取り戻しつつあるが,ピューリタニズムの伝統の強いマサチューセッツ文学とは対照的なチェサピーク湾文学の一環として,19世紀のポーから今日のジョン・バースに至る系譜の中で再考するに値する作家だろう。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キャベル」の意味・わかりやすい解説

キャベル
Cabell, James Branch

[生]1879.4.14. バージニアリッチモンド
[没]1958.5.5. バージニア,リッチモンド
アメリカの小説家,詩人。バージニアの名家に生れ,ウィリアム・アンド・メアリー大学卒業後しばらく記者生活をおくったが,1904年金銭欲を風刺した処女作『鷲の影』 The Eagle's Shadowを発表以来,精力的な作家活動に入った。著書は 50編余を数えるが,最も有名なものは中世の架空の地ポアテムを背景にドン・マニュエルとその子孫をめぐる叙事詩的な連作『マニュエル一代記』 Biography of Manuel (18巻) である。しかし,不道徳のかどで非難を浴びた『ジャーゲン』 Jurgen (1919) を除いてはあまり一般の関心をひかず,もっぱら批評家から好評を得ていた。 30年代に入ってからは,その凝った文体と高踏的厭世的な人生観,芸術観のためにまったく顧みられなくなった。醜い現実を排して空想の世界に遊びながら,幻滅と懐疑を内にいだいていた彼を,「アメリカのアナトール・フランス」と評するものもある。ほかに,詩集,系図学関係の著書がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キャベル」の意味・わかりやすい解説

キャベル
きゃべる
James Branch Cabell
(1879―1958)

アメリカの小説家。バージニア州の名門出身。50冊を超える幻想的なロマンスを書いたが、なかでも有名なのは『マニュエルの伝記』全18冊で、中世の架空の国ボアテムの創設者マニュエルおよびその子孫の冒険を描く。そのうちの質屋ジャーゲンの愛の遍歴を描いた『ジャーゲン』(1919)はわいせつ書として告発されたが、かえって人気を博した。

[板橋好枝 2015年10月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「キャベル」の意味・わかりやすい解説

キャベル

米国の小説家。新聞記者などの経験がある。独特の風刺が特色で,中世フランスの架空の国ポアテムを舞台にした作品が多く,ことに《ジャーゲン》(1919年)が有名。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android