ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キャベル」の意味・わかりやすい解説
キャベル
Cabell, James Branch
[没]1958.5.5. バージニア,リッチモンド
アメリカの小説家,詩人。バージニアの名家に生れ,ウィリアム・アンド・メアリー大学卒業後しばらく記者生活をおくったが,1904年金銭欲を風刺した処女作『鷲の影』 The Eagle's Shadowを発表以来,精力的な作家活動に入った。著書は 50編余を数えるが,最も有名なものは中世の架空の地ポアテムを背景にドン・マニュエルとその子孫をめぐる叙事詩的な連作『マニュエル一代記』 Biography of Manuel (18巻) である。しかし,不道徳のかどで非難を浴びた『ジャーゲン』 Jurgen (1919) を除いてはあまり一般の関心をひかず,もっぱら批評家から好評を得ていた。 30年代に入ってからは,その凝った文体と高踏的厭世的な人生観,芸術観のためにまったく顧みられなくなった。醜い現実を排して空想の世界に遊びながら,幻滅と懐疑を内にいだいていた彼を,「アメリカのアナトール・フランス」と評するものもある。ほかに,詩集,系図学関係の著書がある。
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