アメリカの小説家。バージニア州の名家の出身で早くから文学に興味をもち,文学と両立できる仕事として名家の系図つくりに専念した。それが力となって全18巻のファンタジー的架空年代記《マニュエル伝》を著した。その中の一巻《ジャーゲン》(1919)は発売当初みだらな書物として発売禁止となり,キャベルの名を広く世に知らしめた。中世の架空の国を舞台に,もと詩人で今は質屋のジャーゲンが,ある日ふとしたことで悪魔に同情を示し,悪魔はお礼として恐妻家ジャーゲンの妻の存在を消してくれ,ジャーゲンは1年間夢の女性遍歴に出るが,結局は悪魔に頼んでもとの妻を返してもらうというロマンスである。キャベルの名声は1930年代に下降し,やがてほとんど忘れられてしまった。近年の反リアリズムの流行からやや人気を取り戻しつつあるが,ピューリタニズムの伝統の強いマサチューセッツ文学とは対照的なチェサピーク湾文学の一環として,19世紀のポーから今日のジョン・バースに至る系譜の中で再考するに値する作家だろう。
執筆者:志村 正雄
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アメリカの小説家。バージニア州の名門出身。50冊を超える幻想的なロマンスを書いたが、なかでも有名なのは『マニュエルの伝記』全18冊で、中世の架空の国ボアテムの創設者マニュエルおよびその子孫の冒険を描く。そのうちの質屋ジャーゲンの愛の遍歴を描いた『ジャーゲン』(1919)はわいせつ書として告発されたが、かえって人気を博した。
[板橋好枝 2015年10月20日]
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