日本大百科全書(ニッポニカ) 「キリスト者の自由」の意味・わかりやすい解説
キリスト者の自由
きりすとしゃのじゆう
Von der Freiheit eines Christenmenschen
ドイツ宗教改革者ルターのもっとも優れた内容の小品。1520年に出版され、彼の宗教思想をもっとも簡潔明瞭(めいりょう)に説いている。冒頭に、二つの対立する命題、すなわち「キリスト者はすべての者の上にたつ自由な君主であり、だれにも従属しない」と、「キリスト者はすべての者に奉仕する下僕であり、だれにも従属する」がともにたてられ、自由と奉仕の矛盾が内的な信仰による自由と、そこから生じる外的な愛による奉仕とに分けて論じられ、キリスト者は信仰と愛のうちに生きてこそ自由を実現しうることが強調されている。
こうした信仰による宗教的自由の姿が明確に説かれた著作である。
[金子晴勇]
『石原謙訳『キリスト者の自由』(岩波文庫)』