ドイツの物理学者キルヒホッフが導出した法則で、電気回路に関する法則と、熱放射に関する法則の二つがある。
(1)電気回路に関するキルヒホッフの法則 一般的に電気回路は、電池などの起電力をもつものと抵抗などが、網の目のように接続されたものと考えることができる。この回路の各抵抗に流れる電流は、次の第一法則と第二法則を数式で表した連立方程式の解として求めることができる。
[第一法則]一つの接続点に流れ込む電流の総和はゼロである。この場合、負の電流は接続点から流れ出す電流を意味する。
[第二法則]一つの接続点から出発してふたたび初めの接続点に戻る閉じた径路について、各部分の抵抗とそれに流れる電流の積は、その閉径路に含まれる起電力の和に等しい。
キルヒホッフのこの法則は、直流ばかりでなく交流にも適用することができる。この場合、抵抗のほかに、インダクタンス(コイル)、コンデンサーを含めてもよく、抵抗をインピーダンスと読み替えればよい。
(2)熱放射に関するキルヒホッフの法則 熱は、熱伝導、対流、熱放射によって移動する。かりに熱放射だけがおこるものとし、熱平衡の状態が実現しているとする。この状態で物体の単位表面積から単位時間に放射される熱放射を放射率(輻射(ふくしゃ)能)とよぶ。放射率は、物体の温度、物質の種類、および放射の波長の関数である。また、物体の表面が熱放射を受けたとき、反射する割合を反射率(反射能)、残りの吸収する割合を吸収率(吸収能)とよぶ。これらも、物体の温度、物質の種類、放射の波長の関数である。キルヒホッフの法則とは、放射率の吸収率に対する比が、物体の温度と放射の波長のみで決まり、物質の種類によらないというものである。このことから、熱放射をよく吸収する物体ほど熱放射をよく行うこと、黒体の熱放射は、空洞の壁に孔をあけたときそこから単位面積当りに吹き出す熱放射の強さに等しい、という結論が得られる。
[山口重雄]
一つの化学反応の反応熱の温度による変化を,反応に関与する各物質の熱容量の温度による変化と関係づける法則.G.R. Kirchhoff(1858年)により導かれた.定圧反応熱をΔH,温度をT,反応物質のモル熱容量の和を Cp,A,生成物質のそれを Cp,B とするとき,
となる.ここに,
Δ Cp = Cp,B - Cp,A.
積分すれば,
ΔH = Δ H0 + ∫0TΔ CpdT
となる.ここに,Δ H0は積分定数で,温度0 K における仮想的反応熱の意味をもつ.この式により,反応に関与する全物質のモル熱容量が温度の関数として与えられていれば,反応熱の温度による変化を計算によって求めることができる.Kirchhoffの研究は熱力学ばかりでなく多岐にわたり,電気回路や放射平衡に関してもキルヒホッフの法則とよばれるものがある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
「キルヒホッフの回折理論」のページをご覧ください。
「キルヒホッフの回折理論」のページをご覧ください。
「キルヒホッフの輻射法則」のページをご覧ください。
「キルヒホッフの式」のページをご覧ください。
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