ぎす(読み)ぎす(英語表記)deepsea bonefish

精選版 日本国語大辞典 「ぎす」の意味・読み・例文・類語

ぎす

  1. [ 1 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙 とげとげして無愛想なさま。きびしく親しみがたいさま。
    1. [初出の実例]「世話字尽〈略〉義子成人(ギスナヒト)」(出典:続無名抄(1680)下)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 驚いて動揺するさまを表わす語。ぎく。
    1. [初出の実例]「釈迦・孔子・天照大神の御出現にて御勧めにても、ぎすともする事なし」(出典:葉隠(1716頃)二)

ぎす

  1. 〘 名詞 〙 昆虫きりぎりす(螽蟖)」の異名。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「けふのあつさはそよりともせぬ〈馬莧〉 砂を這ふ蕀の中の絡線(ギス)の声〈沾圃〉」(出典:俳諧続猿蓑(1698)上)

ぎす

  1. 〘 名詞 〙 魚「かながしら(金頭)」の異名。〔物類称呼(1775)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ぎす」の意味・わかりやすい解説

ギス
ぎす / 義須
deepsea bonefish
[学] Pterothrissus gissu

硬骨魚綱ソトイワシ目ギス科に属する海水魚。北海道の釧路(くしろ)以南の太平洋沿岸および瀬棚(せたな)地域以南の日本海沿岸、東シナ海、九州・パラオ海嶺(かいれい)に分布する。体は細長い円筒状で、やや側扁(そくへん)する。体高は背びれ始部付近でもっとも高く、尾柄(びへい)部で著しく低い。目に脂瞼(しけん)がない。口は吻(ふん)の腹面に開き、小さく、その後端は目の前縁下に達しない。上下両顎(りょうがく)には微細な歯があり、絨毛(じゅうもう)状の歯帯を形成する。下顎の腹面に喉板(こうばん)がない。体は円鱗(えんりん)で覆われるが、頭部は多孔(たこう)性で鱗(うろこ)がない。背びれの基底が長く、体の後部のおよそ3分の2にわたっている。臀(しり)びれの基底はきわめて短く、背びれ後端のすこし前から始まる。腹びれは体の中央部にあり、その基底には大形の三角形の鱗がある。肛門(こうもん)は体の後方にあり、臀びれの直前に開口する。体は背側面が暗灰色で、腹側面は銀白色。頭部は黒っぽい。尾びれの上下端は黒色。水深200メートル以深の岩礁域に生息する。産卵期は晩冬から初春で、1~3月ごろにいろいろな発育段階のレプトセファルス(葉形(ようけい)幼生)がとれる。約1年後に変態が終わり、体が縮小して底生生活に移行する。最大体長は60センチメートルほどになる。底引網、深海延縄(はえなわ)などで漁獲され、練り製品原料になる。本種は口が小さく、喉板がないか、小さくて退化的であることでソトイワシ科とともにソトイワシ目に属し、口が大きく、喉板がよく発達したカライワシ目と異なる。また、本種は背びれの基底が著しく長いことで、ソトイワシ科のソトイワシとは容易に区別できる。

[浅野博利・尼岡邦夫 2019年2月18日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ぎす」の意味・わかりやすい解説

ギス (義須)
deepsea bonefish
Pterothrissus gissu

カライワシ目ソトイワシ科の海産魚。岩手・宮城でオキギス,東京でギス,三崎(神奈川)・茨城でダボギスと呼ばれる。腹びれが後位にあり,イワシ類に近い魚である。背びれの基底長が長く,背部のほぼ全面を占める。背面は鮮やかな青色,腹部は灰色を帯びている。うろこは円鱗ではがれやすく,側線がよく発達している。口先が長く突出し,口は下面に開く。やや寒帯性の魚で,しかも200m以上の深海に生息する。北海道から土佐沖までの太平洋岸に分布し,仙台,三崎などで大量に漁獲される。産卵期は春で,200m前後の泥質の海底付近で産卵する。稚魚はウナギ,アナゴ類と同じくレプトセファルス期(木の葉形の透明な体の状態)を経て,1年ほどのちに変態し成体になる。体長は50cmになるものもある。三崎では,だぼ縄と称する一種の底はえなわで冬季に大量に漁獲される。かまぼこ材料として珍重され上等品である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ぎす」の意味・わかりやすい解説

ギス
Pterothrissus gissu

ソトイワシ目ソトイワシ科の海水魚。体長 60cm。体は細長く,背部は暗褐色,腹部は銀白色を呈する。大型で透明,リボン状のレプトケファルス型の幼生期を経る。深海産(→深海魚)。肉はかまぼこの原料とされる。北海道以南の太平洋岸,新潟県沖から鳥取県沖に分布する。

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