改訂新版 世界大百科事典 「クサソテツ」の意味・わかりやすい解説
クサソテツ
ostrich fern
Matteuccia struthiopteris(L.)Todaro
山地の明るい草原や川岸・湿地に群生するメシダ科のシダ。ソテツのような印象を与えるところから和名がつけられた。ガンソク,コゴミともいう。食用・観賞用として用いられる。根茎は直立し,葉を輪状に叢生(そうせい)する。匍匐枝(ほふくし)を出して繁殖し,群落をつくる。葉柄の基部はくちばし状で,鱗片をつける。葉は著しい2形を示す。栄養葉は1mに達し,倒披針形で下部の羽片は次第に小さくなる。1回羽片複葉で,羽片は深く切れ込む。葉脈は遊離脈。胞子葉は栄養葉よりも短く,長くても60cm前後。羽片は葉身部が反転して,こぶが連続した棒状になる。胞子囊群は外向きの球形の包膜に包まれ,さらに反転した葉身に包まれる。北海道から九州にかけて山地の草原や湿地に生じ,北半球の温帯に広く分布する。若葉はワラビ巻きに巻いているのをかがみ込んでいる姿勢にみたてて,地方によってコゴミの方言名で呼ばれている。コゴミは中部・東北・北海道の産地では,昔から農山村の副食として食べている。鮮やかな草緑色で端正な形の栄養葉は,庭草として観賞される場合もある。また胞子葉は質が硬く独特の形をしているので挿花の材料として用いる。
執筆者:加藤 雅啓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報