アメリカの生化学者。アイオワ州生まれ。イリノイ大学で有機化学を専攻し1940年に卒業、1943年ワシントン大学で医学博士号を取り、1957年から同大学教授。1968年よりカリフォルニア大学デービス校へ。1977年にワシントン大学に戻り、1988年に名誉教授となる。
1950年代に同じワシントン大学のE・フィッシャーとともに、筋肉細胞がグリコーゲンからエネルギーを取り出す機構を研究。グリコーゲンからグルコースを切り出してくるフォスフォリラーゼ(加リン酸分解酵素)には非活性型と活性型があり、その二つの型はアデノシン三リン酸(ATP)から取り出されたリン酸基の着脱により制御されていることを発見した。その後、多くの機能タンパク質がリン酸化酵素(キナーゼ)と脱リン酸化酵素(フォスファターゼ)という2組の酵素の働きにより制御されていることが明らかとなった。またクレブスはある種のキナーゼ(プロテインキナーゼA)がサイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)により活性化することをみいだした。これらの功績により1992年、フィッシャーと共同でノーベル医学生理学賞を受賞した。
[馬場錬成]
オーストリアの地理学者。ウィーン大学でペンク、ジュースの指導を受けた。1926年ペンクの後を受けベルリン大学に移り、第二次世界大戦までのドイツ地理学界をリードした。『オーストリアアルプス地誌』(1913)をはじめ、地形学・地理学の多くの著書・論文がある。『東アルプスと現代オーストリア』(1928)などで、アルプスとカルスト、中部ヨーロッパと地中海の地理的対照を中心とした地誌研究を行った。1931年から1932年にはインドを調査し、『前インドとセイロン』(1939)を完成した。没後ラウテンザッハH. Lautensach(1886―1966)が編集した『比較地誌学』(1950)は著名で、ドイツの地誌学の体系化に大きく貢献した。
[市川正巳]
イギリスの生化学者。ドイツのヒルデスハイムで外科医の息子として生まれる。ハンブルク、ベルリン大学に学んだあと、カイザー・ウィルヘルム生物学研究所(現、マックス・プランク研究所)で研究、フライブルク大学で講義したが、ナチスの迫害を受け、ドイツを離れた。イギリスのケンブリッジ大学に移り、1945年から1954年までシェフィールド大学の生化学教授ならびに細胞代謝部門の長を務めた。フライブルク大学では肝臓における尿素形成の回路的な経路、いわゆるオルニチン回路を発見した(1932)。その後シェフィールド大学では、生物体内において糖が酸化的に分解してエネルギーを発生するTCA回路(クレブス回路)を発見した。この研究に対して1953年にノーベル医学生理学賞が授与された。翌1954年オックスフォード大学教授となり、1958年にはサーの称号を受けた。
[宇佐美正一郎]
ドイツ生まれのイギリスの生化学者.ゲッチンゲン大学,ベルリン大学,ハンブルク大学などに学び,1925年医学博士号を取得.その後,カイザー・ウィルヘルム協会生物学研究所のO.H. Warburg(ワールブルク)のもとで呼吸酵素を研究した.1932年フライブルク大学に移り,尿素回路を提唱.1933年ナチスが政権をとるとユダヤ系に対する迫害を避けて渡英し,ケンブリッジ大学のF.G. Hopkins(ホプキンス)の研究室に入る.その後,1938年よりシェフィールド大学薬理学講師,1945年同大学生化学教授,1954年よりオックスフォード大学教授となる.この間,D-アミノ酸酸化酵素の発見やグルタミン代謝を研究し,またピルビン酸とオキサロ酢酸が縮合してクエン酸を生じることを示し,ジカルボン酸経路を発展させてトリカルボン酸サイクル(TCA回路,クレブス回路,クエン酸回路ともいう)を提唱した.この業績に対し,1953年F.A. Lipmann(リップマン)とともにノーベル生理学・医学賞を受賞した.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
ドイツに生まれ,イギリスで活動した生化学者。ドイツ語読みではクレープス。ゲッティンゲン大学卒業後,O.H.ワールブルクの門に入り,呼吸酵素を研究。フライブルク大学に移って(1932),哺乳類などで尿素回路(オルニチン回路)を明らかにした(1933)。これは酵素のサイクル反応によって,アンモニアが尿素として放出される過程である。イギリスでG.ホプキンズの研究チームに加わってから,サイクル反応の着想は呼吸の反応にも生かされて,オキサロ酢酸が炭素化合物(アセチルCoA)を取り入れてクエン酸となり,二酸化炭素を放出しつつオキサロ酢酸に戻るというクエン酸回路(TCA回路,クレブス回路)の大筋をも確立した(1940)。1954年オックスフォード大学教授となる。53年ノーベル生理学・医学賞受賞した。
執筆者:長野 敬
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…トリカルボン酸回路(TCA回路),クレブス回路ともいう。イギリスの生化学者クレブスH.Krebsが1930年代の後半に発見した回路。サイトソール(細胞質基質に相当する細胞の分画成分)でグルコースあるいはグリコーゲンから嫌気性条件下で解糖反応系で生成したピルビン酸が,酸化的脱炭酸反応によってミトコンドリアマトリックスでアセチルCoAを生成すると,次にオキサロ酢酸と縮合してクエン酸が生成するステップから,このクエン酸回路が始まる。…
…トリカルボン酸回路(TCA回路),クレブス回路ともいう。イギリスの生化学者クレブスH.Krebsが1930年代の後半に発見した回路。…
…呼吸とは酸素が直接に基質を〈燃やす〉のではなく,基質から奪われた水素が酸素と出会うことであるとの理解が,こうして整ってきた。細胞内で水素を授受する機構については,セント・ジェルジなどもモデルを提出したが,H.A.クレブスのクエン酸回路(1937)が正しい回答をあたえた。第2次大戦後の研究の発展で,呼吸の反応成分はすべてミトコンドリアに局在することがわかった。…
※「クレブス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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