クロスズメバチ(読み)くろすずめばち(その他表記)Japanese yellowjacket

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロスズメバチ」の意味・わかりやすい解説

クロスズメバチ
くろすずめばち / 黒胡蜂
Japanese yellowjacket
[学] Vespula flaviceps

昆虫綱膜翅(まくし)目スズメバチ科に属する昆虫。日本全土の平地から山地にかけて普通にみられ、ジバチスガレなどともよばれる。体は光沢のある黒色で、白色の横斑(おうはん)がある。土中に営巣し、巣はほぼ球形、直径20~30センチメートルで、10~12巣盤が縦に重ねられ、外側をフットボール状の外被が覆っている。各巣盤は六角形の育児室からなり、全部で1万~2万の幼虫が育てられる。雄バチと新女王バチは晩秋にのみ出現し、交尾した新女王バチは土中などに潜り込んで単独で越冬し、翌春に新しい巣をつくる。典型的な肉食性のハチで、各種の昆虫、クモなどを狩り幼虫の食物とする。漁村では干した魚やイカの肉をかじり取って巣へ運ぶこともある。近縁種にシダクロスズメバチV. shidai、ツヤクロスズメバチV. rufa、キオビクロスズメバチV. vulgarisなどがあり、いずれも土中に営巣するが、成虫は形態的に酷似するので、しばしば本種と混同される。わが国の食用昆虫としても有名で、とくに長野岐阜群馬の各県下では、秋に巣を掘り出して、幼虫や蛹(さなぎ)を蜂の子(はちのこ)とよんで食用に供し、缶詰としても市販される。衛生害虫として、人家周辺の巣では刺傷問題となることもある。

松浦 誠]


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改訂新版 世界大百科事典 「クロスズメバチ」の意味・わかりやすい解説

クロスズメバチ
Vespula flaviceps lewisii

膜翅目スズメバチ科の社会性カリウドバチの1種。数千匹に及ぶ大きな群れをつくり高度の社会生活を営む。地中に巣をつくるため一般にジバチ(地蜂)と俗称される。しばしば人に刺傷を与えるが,子を育てるためにチョウ,ガの幼虫や小昆虫を狩るので,衛生害虫と農業上の益虫の両側面をもつ。信州ではスガレと称し,幼虫とさなぎを甘からく煮つけて食用にする。奄美諸島以北の日本各地,朝鮮半島,中国に分布する。体は黒色で毛がまばらにある。白色の斑紋が頭と胸部に,同色の横帯が腹部各節末端にある。体長は女王バチ17mm,働きバチ11mmで,両者の形態差は明確。巣は紙質で地中のネズミの廃巣などにつくられ,巣盤は数層からなる外被で覆われる。外被の側面に1個の出入口があって,トンネルで外界とつながれる。完成時は8~10層(約1万の育房)を有する。クロスズメバチ属は熱帯を除く北半球に広く分布する。温帯では毎年,越冬した女王が単独で営巣し,夏に働きバチが生まれると階級間の分業に基づく社会生活が始まる。秋から初冬にかけて雄バチと翌年のための新女王(各1000~2000匹)が生まれ,巣は解散する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロスズメバチ」の意味・わかりやすい解説

クロスズメバチ
Vespula flaviceps lewisi

膜翅目スズメバチ科。地方によってはジバチ,スガレともいう。普通にみられる職蜂 (雌) は小型で体長 11~18mm。体は黒色で光沢が鈍く,頭部,胸部には白色斑が,腹部各節の後縁には白色帯がある。スズメバチに似るが小型で,全体に淡色毛がある。地中に数階の巣盤から成る巣をつくる。長野県などでは巣を採集し,中の幼虫や蛹を取出して賞味する。北海道,本州,四国,九州に分布する。なお近縁種のシダクロスズメバチ V. shidaiは,複眼内縁の白色斑が「く」字形である点で区別され,各地に普通にみられる。従来クロスズメバチと混同されていた。

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百科事典マイペディア 「クロスズメバチ」の意味・わかりやすい解説

クロスズメバチ

ジバチとも。膜翅(まくし)目スズメバチ科の昆虫の1種。黒色地に乳白色の横帯がある。女王・雄16mm,働きバチ12mm内外。北海道以外の日本,朝鮮,中国に分布。ややかわいた地中に球形の大きな巣を作り,その中に数段の幼虫室を作る。幼虫はよく肥大し,脂肪に富むため食用にされる。長野県などでは秋に採集し,缶詰にして市販する。
→関連項目スズメバチ蜂の子

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小学館の図鑑NEO[新版]昆虫 「クロスズメバチ」の解説

クロスズメバチ
学名:Vespula lewisi

種名 / クロスズメバチ
目名科名 / ハチ目|スズメバチ科
解説 / オスは秋にあらわれます。地中に大きな巣をつくります。
体の大きさ / 11~18mm
分布 / 北海道~九州、奄美大島
成虫出現期 / 4~11月

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