日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲーリケ」の意味・わかりやすい解説
ゲーリケ
げーりけ
Otto von Guericke (Gericke)
(1602―1686)
ドイツの工学者、物理学者。マクデブルクに生まれる。ライプツィヒ、ヘルムシュタット、イエナで学んだのち、1623年ライデン大学に入り、数学・力学を修めた。故郷に戻って1626年に市会議員となったほか、市長を務める(1646~1676)など、三十年戦争の激動のなかで市政に活躍した。この間、市街が破壊され、各地を遍歴して工学者として活躍した時期もある。
当時話題であった真空に関心をもち、実験に取り組み、1650年ごろ真空ポンプを発明し、それを用いて真空の実験研究を行い、空気弾性を発見、これらはその後、ボイルらによって発展させられた。1657年にはマクデブルクで、半球をウマに引っ張らせる有名な公開実験を行った。この実験をはじめ、彼の真空に関する多くの実験とそれに関する哲学的考察は、1672年に『真空に関するマクデブルクの新実験』にまとめられた。また、硫黄(いおう)球の摩擦実験を行ったことから、起電機の発明者とか電気学研究の先駆者にあげられることもある。ただし、この実験は、天体が磁気力によって相互作用をするという考えで行ったものであり、硫黄を含む金属球に摩擦で生じさせた静電気の効果を天体の力の証明としてとらえていたのである。宇宙と世界の無限についての考察もある。
[高田紀代志]