巌谷小波(いわやさざなみ)作のおとぎ話。1891年(明治24)博文館の「少年文学叢書(そうしょ)」の第一編として刊行。挿絵は武内桂舟(けいしゅう)。小波の処女作で、こがね丸という白犬が、義兄弟の約束を交わした犬の鷲郎(わしろう)その他の助力を得て、父母を噛(か)み殺した虎(とら)の金眸(きんぼう)大王を討つという筋。江戸時代の読本(よみほん)類の影響を受けて成り立っており、識者からは仇討(あだうち)モラルを称揚していると批判されたが、読者たる子供たちからは圧倒的な支持を得た。小波はそのために児童文学の道を歩むようになったともいえる。なお、この作品は文語体で書かれており、大正期の子供たちには読みにくくなったので、1921年(大正10)に口語体に書き直して刊行された。
[上笙一郎]
『「こがね丸」(『明治文学全集20 川上眉山・巌谷小波集』所収・1968・筑摩書房)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…尾崎紅葉らと交わって小説を発表したが,少年少女のセンチメンタルな恋愛を描く作品が多く,この傾向は,児童文学に転ずることによって成功する。その処女作《こがね丸》(1891)は,《少年文学》叢書第1編として近代日本児童文学史をひらく画期的作品となり,以後博文館と組んで,種々の児童向けの雑誌や叢書を刊行した。《日本昔噺》(1894‐96),《日本お伽噺》(1897‐98)で,桃太郎や花咲爺などの民話や英雄譚を再話復活して集成普及し,さらに《世界お伽噺》(1899‐1907)などに拡大した。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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