ゴータ綱領(読み)ゴータこうりょう

改訂新版 世界大百科事典 「ゴータ綱領」の意味・わかりやすい解説

ゴータ綱領 (ゴータこうりょう)

1875年5月,全ドイツ労働者協会ラサール派)と社会主義労働者党アイゼナハ派)がドイツゴータ市で合同大会を開いて採択した綱領。それに基づいて両派ドイツ社会民主労働者党へと発展解消し,その後のドイツ社会民主党の発展の基礎が築かれた。アイゼナハ綱領に比べ,マルクス的な発想が後退し,〈反動的集団〉〈賃金鉄則〉といったラサール派の用語がいっそう目だつ。当面要求としては,普通選挙法の導入など,それまでの運動から受け継いだもの14項目が列挙されている。2月前に公表された草案に対し,マルクスはアイゼナハ派のブラッケWilhelm Bracke(1842-80)に徹底的な批判を書き送った。この《ゴータ綱領批判》は,理論より合同の実現を重視したW.リープクネヒトら当事者によってほとんど生かされなかったが,マルクス晩年の国家論,ラサール批判を示す文書として重要であり,次のエルフルト綱領の作成過程でエンゲルスによって公表された(1891)。
アイゼナハ綱領 →エルフルト綱領
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴータ綱領」の意味・わかりやすい解説

ゴータ綱領
ごーたこうりょう
Gothaer Programm ドイツ語

1875年5月、ドイツ中部ゴータGothaで全ドイツ労働者協会(ラッサール派)と社会民主労働者党(アイゼナハ派)との合同大会が開かれ、ドイツ社会主義労働者党(のちにドイツ社会民主党と改称)が結成された際、採択された綱領。前文で、あらゆる合法的な手段を用いて自由な国家と社会主義社会のために努力することをうたっていたが、同時に、マルサス思想を前提とする「賃金鉄則」の廃棄や、国家補助による生産協同組合の設立などが掲げられていたため、マルクスは草案の段階からこれをラッサール派への譲歩として厳しく批判した。メーリングによれば、マルクスの批判は、草案が両派の理論的見解を忠実に反映していることを誤認した結果であるとされたが、その後、労働運動が発展するに伴い、同綱領は91年、エルフルト綱領にかえられた。

[松 俊夫]

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百科事典マイペディア 「ゴータ綱領」の意味・わかりやすい解説

ゴータ綱領【ゴータこうりょう】

1875年ゴータGothaにおける全ドイツ労働者協会(ラサール派)とドイツ社会民主労働者党(アイゼナハ派)の合同大会で決定されたドイツ社会主義労働党の綱領。国家社会主義との妥協的性格が強かったため,マルクスは文書を送り,これを激しく批判した。→アイゼナハ綱領
→関連項目エルフルト綱領ゴータ

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ゴータ綱領」の解説

ゴータ綱領(ゴータこうりょう)
Gothaer Programm

ラサール派とアイゼナハ派に分裂していたドイツの社会主義運動が,1875年にゴータで合同しドイツ社会主義労働者党を結成した際に採択した党綱領。マルクスエンゲルスはこれを妥協の産物として批判。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴータ綱領」の意味・わかりやすい解説

ゴータ綱領
ゴータこうりょう
Gothaer Programm

1875年にドイツ社会民主労働党 (アイゼナハ派) と全ドイツ労働者協会 (ラサール派) とがドイツ中部のゴータにおいて発表した綱領。この起草にあたっては,両派の主張が平等に採用された。すなわち政治的主張においてはアイゼナハ派の考えをとり,社会的経済的要求においてはラサール派の見解を採用した。だが全般的にみると,ラサール主義のほうが強くにじみ出ていた。このため F.エンゲルスは『ゴータ綱領批判』においてきびしく批判した。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ゴータ綱領」の解説

ゴータ綱領
ゴータこうりょう
Gothaer Programm

1875年,ドイツ社会主義者のラサール派とアイゼナハ派がゴータ市でドイツ社会主義労働者党を結成したときの綱領
国家主義的社会運動を考えるラサール派とマルクス主義を奉ずるアイゼナハ派が合体したため,綱領にもラサール派の主張が妥協的に採用され,マルクスらの批判にあった。ドイツ社会民主党と改称するにあたり,1891年にはエルフルト綱領が採用された。

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世界大百科事典(旧版)内のゴータ綱領の言及

【ドイツ社会民主党】より

…これは,ドイツに労働者を構成要素とした単一社会主義政党が誕生したことを意味する。その思想が折衷主義だったことは,新しい綱領(ゴータ綱領)にマルクスが厳しい批判をもっていたことからも知れよう。
[1875‐1917年]
 同党は1877年の帝国議会選挙で得票率9%強の勢いを示した。…

※「ゴータ綱領」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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