サハラ砂漠南部の半乾燥地帯。気候変動による砂漠化で農地が減る一方、人口は急増し食料が不足。政情が不安定な国もあり、仕事がない貧しい若者がイスラム過激派に加わっている。マリで2012年にクーデターが起き、混乱に乗じて国際テロ組織アルカイダ系勢力が台頭。その後「イスラム国」(IS)に忠誠を誓う勢力も現れた。複数の欧米メディアによると、両勢力は当初連携していたが、その後対立に転じた。(共同)
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サハラ砂漠の南縁に広がる地域。セネガルの北部からモーリタニア南部、マリのニジェール川周辺、ブルキナ・ファソ、ニジェール南部、ナイジェリア北部、チャド中南部を経てスーダンに至るまで、幅約200~400キロメートルの帯状にアフリカ大陸を東西に横断する。サヘルとはアラビア語で岸(サーヒル)の意。
砂漠から南のサバナ地帯への緩衝地帯で、低木(灌木(かんぼく))が育つステップ地帯。雨期は6月~8月、年間降雨量は150~500ミリメートル。オアシス農業や牧畜、モロコシ栽培などが可能だが、乾雨の気候条件によってサハラ砂漠の南で砂漠化前線が大きく南北に変動する。
14世紀ごろまでの安定した湿潤期には諸王国が繁栄したが、その後はたびたびの干魃(かんばつ)にみまわれてきた。1960年代後半から1980年代まで厳しい干魃が続き、砂漠の南下が進んだ。干魃の頻度が高まっているといわれ、2010年、2012年もサヘル地域を含むアフリカ西部が深刻な被害を受けた。チャド湖の縮小など、河川や湖の水位低下も著しい。気候に左右されやすい生活形態のため、干魃は飢饉(ききん)に直結し、アフリカの飢餓地帯ともよばれる。
国連機関や政府、民間団体が食料、医療などの緊急援助に乗り出し、抜本的な砂漠化防止対策の必要から、多角的な調査も行われるようになった。日本でも国際協力機構(JICA(ジャイカ))など、政府や国際機関を通じた支援のほか、非政府組織(NGO)の「緑のサヘル」「サヘルの森(旧名はサヘルの会)」などが、緊急援助から、現地での調査・研究、農業の再建・育成、教育、コミュニティの自立を促すための啓蒙といった幅広い活動を続けている。
自然的要因だけではなく、人口増加による放牧や農耕の拡大、主要なエネルギー資源である薪(たきぎ)の需要の急増など、人為的な森林や生態系の破壊が砂漠化に拍車をかける。砂漠化の防止には、莫大(ばくだい)な資金と人材、貧困に喘(あえ)ぐ地元住民に時間のかかる植林の重要性を理解してもらう地道な努力が前提だ。人口抑制や医療対策、教育の普及など総合的な対策が必要とされる。また、現地での活動は当該国や周辺地域の政治情勢の影響も受ける。2012年から情勢の悪化したマリでは、海外の支援組織がスタッフ派遣を見合わせざるをえない事態も起きている。
[勝又郁子]
『門村浩・勝俣誠編『サハラのほとり――サヘルの自然と人びと』(1992・TOTO出版)』▽『根本正之著『砂漠化する地球の診断』(2001・小峰書店)』▽『吉川賢・山中典和・大手信人編著『乾燥地の自然と緑化』(2004・共立出版)』▽『吉川賢著『砂漠化防止への挑戦』(中公新書)』
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