一定地方に現存する不文の法を記録・叙述した私人の作品を法書と呼ぶ。法書は,ヨーロッパでほぼ12世紀に始まり13世紀に著しい展開をみせた法の文書化現象の表れである。テキストはしばしばラテン語でなく民衆語で書かれている。法書は,法源と法文献との境界線上に位置するものといえるが,たいていは迅速に,一般的に承認された法源としての地位を得ている。また最初から半ば公的な性格を備えていたものもある(イタリア諸都市の慣習法記録,スペイン諸都市のフエロスfuerosなどの中にみられる)。当時におけるローマ・カノン法学の普及が,こうした法記録への刺激を与え,また概念的・技術的な道具を提供したといってよいが,その影響の程度・態様はさまざまである。ドイツの〈ザクセンシュピーゲル〉〈シュワーベンシュピーゲル〉,フランスの〈ボーベ地方慣習法書〉などではそれほどでもないが,フエロスや,イングランドのブラクトンの著作,フランスの〈聖王ルイの法令集〉といった法書にはかなり明瞭なローマ・カノン法学の影響が認められる。
執筆者:佐々木 有司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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