シェニエ(読み)しぇにえ(英語表記)André Chénier

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シェニエ」の意味・わかりやすい解説

シェニエ
しぇにえ
André Chénier
(1762―1794)

フランス18世紀最大の詩人。フランス人の外交官を父に、ギリシア人を母として、コンスタンティノープル(現イスタンブール)に生まれる。5歳よりパリに住む。軍隊生活ののちスイス、イタリアを旅行、1787~90年にはロンドンのフランス大使館に勤務。フランス革命に共鳴し、激動の革命のなかに身を投ずるが、革命の過激化とともに反対の立場にたつ。4か月の牢獄(ろうごく)生活ののち、テルミドールの反動の前日に処刑された。生前にはほとんど詩は知られていなかった。代表作には『若きタランチーヌ』『若き囚(とら)われの女』のような短詩形式の、牧歌、田園詩、哀歌叙情詩や、ホメロスを歌った『盲人』、形而上(けいじじょう)詩『ヘルメス』などの長編詩がある。古典文学、とくに古代ギリシアの詩の影響がみられる。獄中で書いた『風刺詩』には恐怖政治に対する絶望が語られている。最後の古典派とも最初のロマン派ともよばれているが、詩句に諧調(かいちょう)や柔軟さを与える詩法上の革新は、ロマン派へとつながるものであった。その生涯、とくに革命期のシェニエの姿は、イタリアの作曲家ジョルダーノによってオペラアンドレア・シェニエ』(1896初演)に描かれている。

[原 好男

『谷長茂・佐貫健訳「シェニエ詩集」(『世界名詩集大成2 フランス編1』所収・1960・平凡社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シェニエ」の意味・わかりやすい解説

シェニエ
Chénier, André-Marie de

[生]1762.10.30. コンスタンチノープル
[没]1794.7.25. パリ
フランスの詩人。 18世紀最大の抒情詩人で,革命を支持しながらもロベスピエールの恐怖政治を攻撃,断頭台に上った。ギリシア詩と近代哲学を熱狂的に賛美し,この両者をみずからの詩において統一しようと試みた。その詩は生前にはほとんど発表されず,1819年に初めて全集が出て,ロマン派や高踏派の詩人たちから先駆者と仰がれた。代表作は,人類の進歩を主題とした哲学詩『ヘルメス神』 Hermès,古代から得た霊感とロマンチックな感性とを結び合せた『田園詩』 Idylles,『悲歌』 Élégies,支配者への憎しみ,虐殺の恐怖,革命の行過ぎを批判した獄中作『風刺集』 Iambesなど。

シェニエ
Chénier, Marie Joseph Blaise de

[生]1764.2.11. コンスタンチノープル
[没]1811.1.10. パリ
フランスの詩人,劇作家,政治家。 A.シェニエの弟。フランス革命に際し,歴史に取材した愛国的,共和主義的色彩の強い戯曲を残した。狂信を攻撃した政治悲劇『シャルル9世』 Charles IX (1789) ,自由を主題にした『カイウス・グラックス』 Caïus Gracchus (92) などの戯曲のほかに,詩としては『出陣の歌』 Le Chant du départ (94) が有名。

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