シシウド(その他表記)Angelica pubescens Maxim.

改訂新版 世界大百科事典 「シシウド」の意味・わかりやすい解説

シシウド
Angelica pubescens Maxim.

山の谷間や高原の草地に生える大型のセリ科多年草。茎は直立して上部で枝を分かち,高さ1~2mに達する。葉は大きく,根生葉は長い葉柄があって3回羽状複葉となり,茎とともに全体に細毛がある。茎の葉は茎の上部にいくにしたがって小型になり,葉柄の基部は広い鞘(さや)状になって茎を抱く。夏から秋のころ,枝先に大きい複散形花序を作って,多数の白い小さい花をつける。花に多くの甲虫が集まる。花には柄があり,花弁は5枚で,先は内に巻く。おしべは5本,つぼみのときは内側に曲がっている。子房下位で,果実は扁平な楕円形,熟すと2分果に分かれ,縁には広い翼がある。本州九州山地分布する。エゾニュウA.ursina(Rupr.)Maxim.は海岸に近い草地に生える巨大な多年草で,茎は高さ1~3m,太さ6cmにも達する。夏に大きい複散形花序をつけ,40~60本の枝の先に,多数の小さい白い5弁の花を散形につける。本州の北部から北海道サハリンカムチャツカ,東シベリアに分布。アマニュウA.edulis Miyabeは高原に生える大型の多年草で,高さ1~3mに達する。茎や葉には毛がなく,葉は1~2回3出複葉である。夏に複散形花序を出して,多数の白い小さい花をつける。本州の中部地方以北と北海道に分布し,一名マルバエゾニュウともいう。若い葉は食べられる。

 シシウドの類の根や根茎独活(どつかつ)というが,これにはシシウドのほかにも数種のセリ科植物を含む。風邪やむくみの治療に用いる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シシウド」の意味・わかりやすい解説

シシウド
ししうど / 猪独活
[学] Angelica pubescens Maxim.

セリ科(APG分類:セリ科)の大形の多年草。茎は高さ1~2メートル。葉は大形で2~3回3出羽状複葉、裏面の脈上に毛がある。葉柄の基部は鞘(さや)状に膨らむ。8~10月、径50センチメートルに達する傘形の大形の散形花序をつくり、白色花を開く。果実は楕円(だえん)形で長さ約8ミリメートル、広い翼がある。山地の草原に生え、本州、四国、九州に分布する。根を独活根(うどこん)と称し、薬用とする。アマニュウは本種に似るが、葉に毛が生えないこと、花柄の基部に小総包葉があることで区別される。

 シシウド属は北半球を中心に110種あり、日本には前種のほか、本州から沖縄の海岸に生えるハマウドA. japonica A.Grayをはじめ19種が分布する。属名のAngelicaは、本属の1種が強心剤として死者をよみがえらすほど著しい効果があるということから、天使を意味するラテン語angelusにちなむ。俗にアンゼリカとよぶ洋菓子の材料(色づけ、香りづけ)はヨーロッパの高山に生える別種A. archangelica Hoffm.の茎や葉柄を砂糖漬けにしたものである。

[門田裕一 2021年11月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シシウド」の意味・わかりやすい解説

シシウド
Angelica pubescens

セリ科の大型の多年草。アジア東部の温帯から寒帯にかけて分布し,日本では本州,九州に多い。山地のやや湿った向陽地に生える。高さ 2mに達し,枝先や葉裏の脈上には細毛がある。茎は直立し,円柱形で中空。葉は2~3回羽状に分れ,葉柄の基部は鞘状にふくれて茎を抱き,茎の上部では若い花序を包んでいる。花は8~10月に巨大な複散形花序をなして咲き,花序全体の直径は 30cmにも達して,多数の白色小花がつく。高地草原にみられるミヤマシシウド A. pubescens var. matsumuraeは葉の裂片が大きく細長い。ウドに似ていてそれよりも強剛なためシシウドの名があるがウドはウコギ科の植物である。

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百科事典マイペディア 「シシウド」の意味・わかりやすい解説

シシウド

本州〜九州の山地の湿った所にはえるセリ科の多年草。高さ2m内外になり,茎は中空で太い。葉は大きく,3回羽状複葉,葉柄の基部はふくれたさやとなり,茎を抱く。秋,枝先に大きな複散形花序をつけ,多数の白色の小花を開く。果実は紫色で扁平。根は薬用となる。

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