パリサイ派(読み)ぱりさいは(英語表記)Perûšîm ヘブライ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パリサイ派」の意味・わかりやすい解説

パリサイ派
ぱりさいは
Perûšîm ヘブライ語
Pharisaioi ギリシア語
Pharisees 英語

古代資料が伝えるユダヤ教三派の一つ。パリサイ、つまり「分離者」(ペルーシーム)という名称は、律法を守らない人々から自分たちを分離することを意味する。紀元前2世紀にはエッセネ派とともに敬虔(けいけん)派(ハシディーム)に属していたが、伝統的宗教に忠実でありながらも最高法院(サンヘドリン)の一翼を担い、祭司層を中核とする貴族富裕階級の保守的で妥協的なサドカイ派に対して、進歩的で独立的な庶民の利益を代表する立場にあった。彼らは伝統的な律法の理念を日常生活に具体化することのなかに自分たちの生き方をみいだし、律法を時代に即応したものに再解釈することに尽瘁(じんすい)した。その律法解釈と敷衍(ふえん)は「ミシュナ」としてのちに集大成され、彼らの思想的な流れはユダヤ教正統派のなかに継承されて今日に至っている。

[石川耕一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パリサイ派」の意味・わかりやすい解説

パリサイ派
パリサイは
Pharisaioi; Pharisees

パリサイ人,ファリサイ派,ファリサイ人ともいう。前2世紀のマカベア戦争直後から紀元1世紀頃にかけて存在したユダヤ教の一派。語義は「分離した者」。ハシディーム派の敬虔な一派が祖という。律法厳守に徹して民衆や他宗派に接せず,ユダヤ教の創始者エズラに従い,口伝律法も成文律法と同様に権威を有するとしてその拘束性を主張。サドカイ派と異なり,非ユダヤ的なものに反対し,熱心党が目指したような政治闘争には加わらず,死後の応報,肉身のよみがえりを信じ,自由意志と予定の結合を唱えた。キリストの教説に反対し,福音書では偽善者と非難されるが,宗派としては純正な立場をとりシメオン,ザカリアス,パウロなどすぐれた人材を擁していた。前2世紀から紀元 70年のエルサレム陥落まで勢力を保ち,ヘロデ大王の頃 6000人に達したという。しかし 70年以後も残存し,ラビの思想に影響を残した。

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