改訂新版 世界大百科事典 「シュロチク」の意味・わかりやすい解説
シュロチク
Rhapis
ヤシ科シュロチク属に属し,中国南部,北ベトナム,ラオスに約20種が分布する。葉のとれたあとが幹状となり,茎20~30mm,高さは1~4mに達し,幹肌は褐色の繊維網でおおわれる。このような幹が叢生(そうせい)状態となり,なん本も立ち上がる。葉は光沢ある鮮緑色の掌状葉,肉穂花序は花梗が初め桃色で,開花すると黄色くなる。雌雄異株。小型のヤシで,観葉植物として栽培される。
カンノンチク(観音竹)R.excelsa Henry exRehd.は中国南部の原産。沖縄にも自生している。比較的小型で,幹は通常高さ1~2m,叢生して株立ち状態となる。葉は濃緑色の掌状葉で6~8枚に深く裂け,長い葉柄の先につく。この種には葉の形,色彩,斑模様(ふもよう)などの異なるいろいろの変種,品種があり,もっとも多く栽培されている。その代表的なものとして斑入りとなるシマカンノンチクやズイコウニシキが,また小型矮性(わいせい)化した大黒天,達磨(だるま)その他多くの品種(平和殿,小判,小達磨,太平殿,天山など)がある。シュロチクR.humilis Blumeは中国南部の原産。葉姿はカンノンチクに似るが,全体にほっそりとした感じである。幹は高さ4~5mになり,多数叢生するが,細長い。葉は光沢ある濃緑色で互生し,掌状葉は7~18片と細く深く裂け,裂片はカンノンチクよりも幅が狭い。変種と品種があるが,わずかである。カンノンチクよりも寒さに強く,西南日本では露地植えでも越冬でき,ときには大株を見る。
どちらの種類も日本では《花壇地錦抄》(1695)に記事がみられるほどで,古い時代から観賞用に栽培されている。温室のなかった時代からつくられており,性質は強い。冬は最低3~5℃以上保てばよく,生育適温は10℃以上である。夏は強光下でもなれれば日焼けを起こさないが,美しい葉を眺めるためには,4月終りころから9月までは明るい日陰におき,つねに水を多く与え,空中湿度を多く保つ。培養土は川砂を主体にし,これに2割前後の腐葉土かピートモスを混ぜたものを,植替えや株分けに使う。繁殖はもっぱら株分けにより,5月中旬~6月に3~5本の幹をつけて割る。まれに種子ができるので,実生でもよい。
執筆者:坂梨 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報