ションガウアー(読み)しょんがうあー(英語表記)Martin Schongauer

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ションガウアー」の意味・わかりやすい解説

ションガウアー
しょんがうあー
Martin Schongauer
(1425/1445―1491)

ドイツの画家版画家。出生年の詳細は不明。アウクスブルク鍛冶(かじ)職の息子として生まれる。主としてコルマールで仕事をし、晩年ブライザハに移って2月2日同地で死去した。現存する唯一の確実な板絵の作品は、1473年作の『バラの籬(まがき)のマドンナ』(コルマール、聖マルティン教会)で、そこにはフランドル絵画、とくにワイデンの影響がうかがわれる。深い内面性をたたえたこの聖母像は、ドイツ後期ゴシック絵画の至宝の一つである。フレスコ作品では、88年に依頼を受けて制作したブライザハ聖堂の内陣西壁の『最後の審判』が知られるが、1931年に取り払われた。彼のもっとも注目すべき表現分野は銅版画で、115点の作品が現存する。聖なる主題現世情感を通わせた表現力豊かな彼の版画には、すでに近世が予告され、遠近法の解釈をはじめとするその技法は、若いデューラーを魅了し影響を与えた。

[野村太郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ションガウアー」の意味・わかりやすい解説

ションガウアー
Schongauer, Martin

[生]1450頃.コルマール
[没]1491.2.21. ブライザハ
ドイツの画家,銅版画家。アウクスブルクの金細工師の息子。修業時代については不明。 R.ワイデンの影響を受けていることから,彼の弟子と推定されている。 1489年以後はブライザハで活動。確証ある唯一の板絵は『ばら園の聖母』 (1473,コルマール,サン・マルタン聖堂) で,これは後期ゴシック絵画の頂点を形成する作品の一つ。フレスコ画としてはブライザハ大聖堂西壁画に描かれた『最後の審判』の断片が残存するが,彼の業績名声はむしろ銅版画家としての活動によるもので,デューラーの初期の作品はむろんのこと,広くヨーロッパ全体に大きな影響を与えた。宗教的主題の銅版画 115点が残存する。

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