ジフェニルアミン反応(読み)ジフェニルアミンハンノウ

化学辞典 第2版 「ジフェニルアミン反応」の解説

ジフェニルアミン反応
ジフェニルアミンハンノウ
diphenylamine reaction

酸化性化合物(過オキシ酸,エーテルの過酸化物,オゾニドベンゾキノンナフトキノン),強酸化性窒素化合物(硝酸,亜硝酸エステル,ニトロアミンニトロソアミン,アミンオキシド,ジニトロ化合物)などによりジフェニルアミンが酸化され,深藍色,緑色,または青藍色を呈する反応この反応は,次の2種類に大別される.
(1)ルンゲ試験(Lunge's test):硝酸イオンの検出法,ジフェニルアミン0.5 g を濃硫酸100 mL に溶解し,水20 mL を加えて調製した試薬2~3 mL を試験管にとり,硝酸試料溶液でジフェニルアミン水溶液の表面を覆うと,2液間の界面に青色環を生成する.この反応はきわめて鋭敏であるが,硝酸イオンのほかでも酸化性化合物があれば発色する.窒素としての検出限界は0.05 ppm である.
(2)ディッシュ反応(Dische's reaction):2-デオキシペントース呈色反応微量検体を水に溶解し,20% ジフェニルアミンのアルコール溶液数滴を加え,これに濃硫酸1 mL を加えて沸騰水浴上で10 min 加温すると青色に呈色する(ペントースは緑色).この反応は,デオキシリボ核酸(DNA)の定量分析に応用される.50~100γのDNAを含む検体に,その2倍容のジフェニルアミン試薬を加え,100 ℃ で10 min 加熱すると青色に呈色する.この呈色はかなり安定で,595 nm吸収極大をもっている.また,この反応はかなり特異性があり,異種糖類で同じ波長の吸収をもっているものは少ない.DNAを構成するヌクレオチドのうち,発色に関係するのはプリンデオキシヌクレオチドであって,ピリミジンのヌクレオチドは発色しないか,あるいはごくわずかに発色する.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジフェニルアミン反応」の意味・わかりやすい解説

ジフェニルアミン反応
じふぇにるあみんはんのう
diphenylamine reaction

糖類の呈色反応の一種。ジフェニルアミンを利用した定性反応と定量反応がある。

(1)硝酸イオンの検出反応 19世紀の末期ドイツのG・ルンゲが考案したのでルンゲ試験ともいう。ジフェニルアミン0.5グラムを100ミリリットルの濃硫酸に溶かし、20ミリリットルの水で薄めた溶液2~3ミリリットルを試験管にとり、その表面に硝酸イオンを含む溶液を静かに流し込むと、2液間の界面に青色の環ができる。硝酸イオンの限界濃度0.2ppm。この反応は鋭敏であるが、亜硝酸イオン、種々の酸化剤、発煙硫酸などでもおこる。

(2)デオキシ核酸の定量 ディッシェ反応ともいう。1930年にディッシェZ. Dische(生没年未詳)により発表された。ジフェニルアミン試薬(再結晶したジフェニルアミン1グラムを100ミリリットルの氷酢酸に溶かし、2.75ミリリットルの濃硫酸を加えたもの)に核酸を含む試料溶液を加えると青色になる。発色するのはプリンヌクレオチドのみで、ピリミジンヌクレオチドは発色しない。溶液の吸収極大595ナノメートルを利用してデオキシ核酸の比色定量を行うことができる。青色は、加水分解で生じたデオキシリボースからδ(デルタ)-ヒドロキシレブリン酸が生成し、ジフェニルアミンと反応するためといわれている。

[務台 潔]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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