日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジョージアン様式」の意味・わかりやすい解説
ジョージアン様式
じょーじあんようしき
Georgian style
イギリスのハノーバー朝、最初の4人の国王ジョージ1世、2世、3世、4世の治世(1714~1830)に行われた建築・工芸の様式。期間が100年余にわたるため様式的にもさまざまな局面を有している。前半はC・レンに代表されるバロックに対する反動から、W・ケントらを中心にパッラディオの復権が唱導され、イタリア・ルネサンス建築に範をとった種々の試みがなされた。高まりつつあった古代への憧憬(しょうけい)は、グランド・ツアーの流行と相まって、人々をローマからギリシア、さらに近東へと駆り立て、18世紀もなかば過ぎには中国趣味(シノワズリー)などの異国趣味やゴシック趣味の流行をも生み出すことになった。こうしたなかでロバート・アダムは、発見されたばかりのポンペイ遺跡などの研究に基づいて、軽快な装飾モチーフを駆使した優雅で端正な新古典主義建築を実現した。工芸では、陶磁器のJ・ウェッジウッドや家具のT・チッペンデール、T・シェラトンなどが目覚ましい活躍をみせている。
[谷田博行]