日本大百科全書(ニッポニカ) 「スカロン」の意味・わかりやすい解説
スカロン
すかろん
Paul Scarron
(1610―1660)
フランスの詩人、劇作家、小説家。パリに生まれ没す。宗門に入り、1633年、司教シャルル・ド・ボーマノワルに仕え、ル・マンに赴く。40年パリに戻るが、すでに悩んでいた結核性リウマチが高じて、身体(からだ)はねじれ、足は萎(な)え、以後椅子(いす)に座ったきりであったが、病苦に屈せぬ彼は『ビュルレスク詩集』(1643)、『ティポン、または神と巨人の戦い』(1644)、『戯作ウェルギリウス』(1648~59)によってすべてを滑稽(こっけい)しさる道化調(ビュルレスク)burlesqueの流行を促す一方、『ジョドレ』(1643)、『平手打ちをくったジョドレ』(1647)、『滑稽な相続人』(1649)などの喜劇を発表した。52年に詩人アグリッパ・ドービニェの孫娘にあたる薄幸の孤児フランソアーズ・ドービニェFrançoise d'Aubigné〔後のルイ14世の寵妃(ちょうひ)マントノン夫人(1635―1719)Mme de Maintenon〕と結婚、そのサロンは彼の才知と妻の美貌(びぼう)でにぎわった。代表作としては、田舎(いなか)町ル・マンを舞台に展開する旅役者一座と、これを取り巻く町の人々が醸し出す数々の滑稽で陽気な事件を語る現実派小説の傑作『ロマン・コミック』Roman comique(1651~57)がある。
[渡邊明正]