改訂新版 世界大百科事典 「トラバース測量」の意味・わかりやすい解説
トラバース測量 (トラバースそくりょう)
traversing
多角測量ともいう。三角形の形と大きさは,2辺の長さとその夾角を知れば一意的に定まる。したがって,位置のわかっている基準点からある方向へ折線状の測量路線を設けて,折線の各辺の長さと,頂点において隣りあう2辺のなす角を測定すれば,各頂点の位置が次々と求められる。このような測量方式をトラバース測量と呼ぶ。トラバース測量の路線図で測定されていないもう1辺を各三角形に描き入れてみると,これが実は三角形を並べた細長い三角網にほかならないことがわかる。つまりトラバース測量は,三辺測量あるいは三角測量において,観測の冗長度を限界まで切りつめたものであると考えることができる。このため,1点の位置を決定するために必要な時間,経費が少なくてすむという利点がある。その反面,同一点の位置を複数の経路で決定してつき合わせることによる誤りの検出,あるいは平均操作による統計的な精度の向上が望めず,求められる頂点の位置の精度は三辺測量に比べて低い。通常は冗長度を増すために,位置の知られている他の基準点と結合するか,環状に出発点に戻るかの方法がとられる。トラバース測量は,精度の要求が厳しくなく早急に成果を得たい場合,測量地域が細長い場合,地形や地物の影響で直接見通しのきく方向が限られている場合などに用いられる。
執筆者:海津 優
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報