明治〜昭和期の言語学者,国語学者,文化史学者,随筆家 京都帝国大学名誉教授。
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報
言語学者。山口市生れ。1899年東京帝国大学文科大学博言学科を卒業,東京高等師範学校教授(のち東大助教授兼任)を経て京都帝大教授となり,1936年定年退官に及ぶまで,同大学の言語学講座を担当すること28年におよんだ。その間,文学博士の称号を得(1910),帝国学士院の会員に推された(1928)。退官後は京大名誉教授。56年文化勲章を受けた。国語審議会,国宝保存会など,種々の委員会の委員や会長などをつとめ,学術の振興に大きな貢献をした。日本における言語学の創業の功が上田万年に帰せられるとすれば,新村は,その設計に参与して上田を助けたばかりでなく,彼自身,たゆまぬ構築の努力をつづけていったものと評しうる。その業績は,その内容において学問的価値を有するばかりでなく,流麗な筆によって精彩を放っている。その研究範囲はひろく,ことに,語学資料の研究に端を発したいわゆる南蛮研究では,独自の地位を占めている。彼は言語学者であるが,その本領は,むしろ文化史上の問題の考証を得意とする歴史家たるにある。国語辞書の編集を通じて社会に致した功績もまた没しえない。《南蛮記》《南蛮更紗(さらさ)》《日本吉利支丹研究余録》《東方言語史叢考》その他の著書のほか,《広辞苑》(1955)など多くの国語辞典の編さんがある。全集15巻(1971-73)がある。
執筆者:亀井 孝
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言語学者、文化史家。山口市生まれ。もと関口氏。東京帝国大学博言学科(後の言語学科)卒業。東京高等師範学校(現、筑波(つくば)大学)教授、東京帝国大学助教授として国語学を講じたのちヨーロッパに留学し、帰国後は京都帝国大学教授として長年にわたり言語学講座を担当。ヨーロッパの言語学を踏まえたうえで内外の資料を博捜して、日本語音韻史や近隣の諸言語との比較研究に成果をあげ、それらは『東方言語史叢考(そうこう)』(1925)にまとめられている。また、日本語の語源の考証や外来語の研究にも力を入れ、『東亜語源志』(1930)がこの方面の主著であるが、ほかにも語源に関する随筆風の著作が多数ある。また、キリシタンの残した文献を国語史の資料として利用することに端を発して、広く南蛮文化の研究を行い、『南蛮記』『南蛮更紗(さらさ)』など、文芸的香りの高い考証的随筆集を著した。また典籍に関する著作も多数ある。きわめて多方面にわたる学識をもち、学術・文化に関する諸団体の委員や会長を務め、1928年(昭和3)には学士院会員に選ばれた。また、各種の国語辞典の編者となったが、『辞苑(じえん)』(1935)の増補版である『広辞苑』(1955)は百科事典を兼ねる便利なものとして広く用いられている。おもな著作はすべて全集に収められ、さらに東京帝国大学における講義の筆録が『新村出国語学概説』(1974)として刊行された。1956年(昭和31)に文化勲章を受章。
[安田尚道 2018年10月19日]
『『新村出全集』15巻・索引1巻(1971~1983・筑摩書房)』
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