スプロール現象(読み)すぷろーるげんしょう(その他表記)sprawl

翻訳|sprawl

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スプロール現象」の意味・わかりやすい解説

スプロール現象
すぷろーるげんしょう
sprawl

急速な都市化とともに拡大する都市地域において、土地利用が無秩序、無計画に進行し、まるで虫に食い荒らされたような状況になることをいう。都市への人口や機能の集中が進行し、とくに過密化してくると、それとは裏腹に、それらの都市周辺(近郊農村)への分散が促進され、激化するが、この傾向は都市周辺における急激に進む団地・住宅の乱立工場・住宅の混合、サービス施設の進出などに現れてくる。こうした土地利用に対する統制や規制は後手に回ることが多く、したがって、道路や交通機関などの生活基盤とか、公共施設を含む生活環境とかの整備は遅れることにもなりやすい。また、地震や水害などの自然的災害に対処する対策も後回しにされることが多い。

[高橋勇悦]

『山崎不二夫・森滝健一郎他編『現代日本の都市スプロール問題』上下(1978・大月書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「スプロール現象」の意味・わかりやすい解説

スプロール現象 (スプロールげんしょう)

スプロールsprawlとは〈ぶざまに広がる〉という意味で,都市が急速に発展し,周辺へ無秩序に市街地が広がる現象をいう。日本の大半の都市の周辺では,こうしたスプロール現象が発生しており,道路,上下水道,電話その他の都市施設が整備されず,自然発生的に市街地化,都市化が進むため,都市問題を激化させている。とくに東京,大阪,名古屋など三大都市圏で,こうしたスプロール現象が著しく,家屋や工場が建ち並んでから,道路や上下水道その他の都市施設の整備が後追いの形で行われている。こうした悪循環を断ち切るために都市周辺部を市街化区域市街化調整区域に分け,市街化調整区域では市街化を認めない(ただし大規模な開発例外)方針でスプロール化を阻止しようとしている。しかし市街化区域内においても,整備が十分進まないうちに家が建ち並ぶことが多く,こうしたスプロール現象は大都市,中都市を問わず,日本の都市の大きな悩みとなっている。欧米風の計画的都市建設が望まれるゆえんである。
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百科事典マイペディア 「スプロール現象」の意味・わかりやすい解説

スプロール現象【スプロールげんしょう】

市街地が都市の外縁に向かって無秩序に広がる現象。都市中心部に中枢機能が集中,集積されると居住機能は追いやられ,鉄道網などに沿っての都市外縁部に宅地が開発される。しかし急速な発展は生活施設の不十分な状態での開発をもたらし,公共サービスの能率性を低下させ,新たな生活環境の整備を困難なものとする。日本の東京,大阪,名古屋の3大都市圏にこの傾向が著しく,また1970年代以降には地価高騰により,通勤圏を超える地域にまでこの現象を出現させている。
→関連項目過疎・過密都市都市問題

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スプロール現象」の意味・わかりやすい解説

スプロール現象
スプロールげんしょう
sprawl

都市工学用語。都市が周辺に無秩序に広がる現象。ヨーロッパでは市壁の撤去を機に,さらに鉄道などの大量輸送交通手段の発展に伴い,急速に伸展。その発展形態については E.バージェスの同心円理論以下,道路や鉄道沿いに延びる放射状あるいは楔状などの説がある。東京は江戸時代から伸展の傾向を示し,この現象が顕著となったのは,1960年代の高度成長期における急激な発展である。その結果,大都市周辺の住宅や工場が無計画なままに建設され,近郊農地,山林の侵食に伴う土地利用の混乱,地価の高騰,交通の渋滞,環境の悪化などの諸問題が山積した。外国でもこの問題は特定の大都市にみられ,ロンドン,ニューヨーク,ロサンゼルス,ホンコンなどは顕著である。スプロール現象の対策としては,的確な都市計画による人口の分散,産業の過疎地移転などが考えられている。

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世界大百科事典(旧版)内のスプロール現象の言及

【住宅政策】より

…この現象はフローの市場においてもストックの市場においても集住条件の厳しいところで鋭く顕在化する。つまり地域的に集団化して現れやすく,具体的にはスプロール現象スラム化などの形をとることが多い。これが住宅問題発生の第2の側面である。…

【土地問題】より

…また地価の高騰は,マンション建設やミニ開発の原因でもあるが,逆にマンション建設やミニ開発が,地価の上昇を加速してもいる。さらに都市郊外の田園地帯における無秩序な都市化,いわゆるスプロール現象は,緑を少なくして環境を悪くするばかりでなく,計画的な都市づくりがおこなわれている場合にくらべると,公共施設の効率をいちじるしく悪くし,それだけ住民に対する税負担を重くする。このような現象が起こった原因は,根本的には高度経済成長期に資本と人口が都市に集中したことにある。…

※「スプロール現象」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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