ゼーベック(読み)ぜーべっく(英語表記)Thomas Johann Seebeck

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゼーベック」の意味・わかりやすい解説

ゼーベック
ぜーべっく
Thomas Johann Seebeck
(1770―1831)

ドイツの物理学者エストニアタリンに生まれる。ゲッティンゲン大学で医学を修めたが、大学に勤めるなどの公職につかず、自然科学を研究し、1818年ベルリン科学アカデミー会員となった。1822年、銅とビスマスなどを線状にして、その両端を接合し、この両端に温度差を与えると両端に電位差が生じる現象(熱電気現象)の発見に関する論文を発表した。この電位差は熱起電力といい、「ゼーベック効果」ともいわれる。また温度1℃当りの熱起電力を熱電能またはゼーベック係数とよぶ。熱起電力は導体あるいは半導体などの物質の種類と温度差のみによって決まり、今日、一般に使われている熱電対(ねつでんつい)はこの起電力を利用している。ゼーベックはこの電気現象を発見したが、彼自身は磁気現象ととらえていた。このほか糖の水溶液中での偏光面の回転の研究などがある。

[武澤 隆]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゼーベック」の意味・わかりやすい解説

ゼーベック
Seebeck, Thomas Johann

[生]1770.4.9. エストニア,タリン
[没]1831.12.10. ベルリン
ドイツの物理学者。ベルリン大学,次いでゲッティンゲン大学で医学を修めたが,自然科学に興味をもち,ゲーテの色彩論に触発されて光学研究を手がけた。色による加熱効果の研究,偏光の研究で認められ,ベルリン科学アカデミー会員 (1814) 。 1820年代ベルリン移住後,電磁気の研究を行い,磁気ヒステリシスを発見。 1921年には,2種の金属から成る回路一方の接合点を加熱すると近くの磁針に影響を与えることを発見,彼は「熱磁気」と呼んだが,のちにこれは熱起電力を生じるゼーベック効果として貴重な発見とされた。

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