末期癌(がん)の患者など、治癒の可能性のない患者を援助する(ケアする)ことをいう。現代医療は、〔1〕検査、〔2〕診断、〔3〕治療、〔4〕延命という四つの働きをもっている。入院してきた患者はおびただしい数の検査を受け、その検査結果と診察の結果から総合的な判断がなされ、診断が下される。そして、診断に基づいて治療がなされる。こうした現代医療は、治癒可能な病気の場合には大きな力を発揮する。しかし、進行した癌のように、現代医療の粋(すい)を集めても治癒に導くことができない病気の場合、そうした患者に対して、十分に援助の手を差し伸べることができていない。そして、単に時間的な延命をすることだけに関心の目が注がれているのが実情である。
ターミナル・ケアの目ざすところは、ただ単に延命を図ることだけではなく、患者の苦痛を緩和して、人間らしい生を全うするのを援助することである。ターミナル・ケアの対象となる代表的な病気は末期癌である。末期癌の患者は痛みをはじめとして、便秘や吐き気、全身倦怠(けんたい)感や不眠など、多くの苦痛を経験する。ターミナル・ケアの第一の目的は、このような身体的な不快な症状をさまざまな方法を用いて緩和することである。さらに、患者を精神的に支えることもターミナル・ケアの重要な目的である。不安や恐れをもつ患者には十分に時間をかけて耳を傾け、その不安や恐れに対して理解的態度をもって接することによって、初めて患者を精神的に支えていくことができるのである。
ターミナル・ケアの今後の課題は、高度に発達した現代の医療システムのなかで、どのようにして一般病院において、医の心ともいうべき「ケア」の考え方を実践していくかということの模索にある。ただ単に病気の治療というだけでなく、病人全体をケアしていくことの重要性は、今後ますます強調されねばならないことである。
[柏木哲夫]
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(中谷茂一 聖学院大学助教授 / 2007年)
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