ターミナルケア(読み)たーみなるけあ(その他表記)terminal care

デジタル大辞泉 「ターミナルケア」の意味・読み・例文・類語

ターミナル‐ケア(terminal care)

終末医療

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ターミナルケア」の意味・読み・例文・類語

ターミナル‐ケア

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] terminal care ) 末期癌(がん)など、回復見込みのない患者苦痛緩和し、精神的に支え、生を全うできるように行なう介護医療。終末医療。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ターミナルケア」の意味・わかりやすい解説

ターミナル・ケア
たーみなるけあ
terminal care

末期癌(がん)の患者など、治癒の可能性のない患者を援助する(ケアする)ことをいう。現代医療は、〔1〕検査、〔2〕診断、〔3〕治療、〔4〕延命という四つの働きをもっている。入院してきた患者はおびただしい数の検査を受け、その検査結果と診察の結果から総合的な判断がなされ、診断が下される。そして、診断に基づいて治療がなされる。こうした現代医療は、治癒可能な病気の場合には大きな力を発揮する。しかし、進行した癌のように、現代医療の粋(すい)を集めても治癒に導くことができない病気の場合、そうした患者に対して、十分に援助の手を差し伸べることができていない。そして、単に時間的な延命をすることだけに関心の目が注がれているのが実情である。

 ターミナル・ケアの目ざすところは、ただ単に延命を図ることだけではなく、患者の苦痛を緩和して、人間らしい生を全うするのを援助することである。ターミナル・ケアの対象となる代表的な病気は末期癌である。末期癌の患者は痛みをはじめとして、便秘吐き気、全身倦怠(けんたい)感や不眠など、多くの苦痛を経験する。ターミナル・ケアの第一の目的は、このような身体的な不快な症状をさまざまな方法を用いて緩和することである。さらに、患者を精神的に支えることもターミナル・ケアの重要な目的である。不安や恐れをもつ患者には十分に時間をかけて耳を傾け、その不安や恐れに対して理解的態度をもって接することによって、初めて患者を精神的に支えていくことができるのである。

 ターミナル・ケアの今後の課題は、高度に発達した現代の医療システムのなかで、どのようにして一般病院において、医の心ともいうべき「ケア」の考え方を実践していくかということの模索にある。ただ単に病気の治療というだけでなく、病人全体をケアしていくことの重要性は、今後ますます強調されねばならないことである。

柏木哲夫

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「ターミナルケア」の意味・わかりやすい解説

ターミナルケア

死を間近に迎えた患者に対する看護,治療。末期医療ともいう。医学的に治る見込みがないと診断され,数ヵ月以内に死亡すると予測される患者に対して行われる。患者の肉体的精神的苦痛に対して,近代医学の治療中心的な方法で対処するのではなく,近代医学の力を借りながらも精神的援助を重視する。このため医療スタッフだけでなく,心理学者,ケースワーカーカウンセラー,さらには宗教家などの幅広い専門家の協力が必要になる。ターミナルケアを重点的に行う医療施設はホスピスと呼ばれる。
→関連項目クオリティ・オブ・ライフ在宅ケア

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ターミナルケア」の意味・わかりやすい解説

ターミナルケア
terminal care

終末期の看護あるいは臨終の看護の意。数週ないしは数ヵ月のうちに死亡が予想される治癒の望みのない末期患者に対して,キュア (cure。治療) でなくケア (care。看護) を重点的に行おうとする医療のあり方をいう。単なる延命のための治療である点滴注射,生命維持装置などを排除して,死にいたるまでの過程を患者の肉体的苦痛や精神的不安を除き,平安な毎日を送らせることを目指す。延命医療技術の発達により,回復不能の末期症状の患者を長期間にわたって生きながらえさせることが可能になってきたが,患者の尊厳や生命の質 quality of lifeという観点から,死のあり方をとらえ直そうとする議論が,アメリカをはじめ日本でも盛上がってきた。ターミナルケアでは,ソーシャールワーカー (社会福祉専門職) などの支援も大切な要素とされている。また,ホスピス hospiceもほぼ同義であるが,日本では医療施設をさすことが多い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

知恵蔵 「ターミナルケア」の解説

ターミナルケア

末期がんなど、治癒困難な患者と家族を対象とする、身体・精神両面の終末期ケア。緩和ケアと称されることもある。延命治療が中心ではなく、苦痛と死に対する恐怖の緩和を重視し、自由と尊厳が保障された生活の中で死を迎えられるよう援助する。医師や看護師だけでなく、ソーシャルワーカーや心理職、宗教家、ボランティアなどによるチームで取り組まれる。家族や友人との心の交流の機会が重視され、また、こうした施設や在宅でのケアをホスピス(hospice)という。日本では1990年から末期がん患者への保険適用の緩和ケア病棟が創設された。本人が死を主体的に迎えるためには、病名告知を含むインフォームド・コンセントの確立、尊厳死の認知などの課題が存在する。

(中谷茂一 聖学院大学助教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

葬儀辞典 「ターミナルケア」の解説

ターミナルケア

回復の見込みのない患者に対して苦痛を軽減し、精神的な安定を与えるように施される医療や介護。いわゆる終末医療。

出典 葬儀ベストネット葬儀辞典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android