チョウゲンボウ

改訂新版 世界大百科事典 「チョウゲンボウ」の意味・わかりやすい解説

チョウゲンボウ (長元坊)

タカハヤブサ科の鳥の1種,またはハヤブサ属のうち,やや小型のものの総称。チョウゲンボウFalco tinnunculus(英名common kestrel)はアフリカとユーラシア大陸に広く分布し,おもに平地から低山帯にすむ。日本では本州の中部以北の崖地で繁殖し,冬は河原や草原にすむ。全長は,雄約33cm,雌約38cm。雌は全身茶褐色で細かい斑があり,雄は頭と尾が青灰色である。空中小鳥を狩るほか,地上でバッタ類など大型の昆虫をとり,またホバリング(停止飛行)しながらネズミを狙う。断崖の小さな横穴などに巣材を使わず直接1腹4~6個の卵を産む。長野県中野市の十三崖は,チョウゲンボウ集団繁殖地として1953年に国の天然記念物に指定されたが,その後河川の改修工事などのため獲物が少なくなり,個体数も減少した。

 チョウゲンボウの仲間は,どの種も比較的翼と尾が長く,しばしばホバリングを行い,主として地上の大型の昆虫や小型の哺乳類,小鳥などを餌としている。世界に約16種が分布する。日本にはコチョウゲンボウが大陸から冬鳥として渡来し,ヒメチョウゲンボウアカアシチョウゲンボウが迷鳥として観察されたことがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チョウゲンボウ」の意味・わかりやすい解説

チョウゲンボウ
Falco tinnunculus; common kestrel

ハヤブサ目ハヤブサ科。全長は雄 33cm,雌 39cm。雌雄異色。雄は,頭部が灰色,背面は栗色で黒斑がある。喉から腹は薄い褐色を帯びた白色で黒い縦斑がある。尾は灰色で先端近くの黒帯が目立つが,先端は白い。雌は頭と尾羽が淡褐色で,全体に赤褐色に富む。北極圏を除くユーラシア大陸とサハラ砂漠を除くアフリカに分布する。北部で繁殖する鳥は温帯熱帯に渡って越冬する。日本では本州中部以北や北海道で繁殖し,おもに留鳥として生息するが,冬季は南部へ渡る鳥もいる。崖のくぼみや岩棚,コンクリートの建物,樹上カラスの古巣などに巣をつくる。ほかのつがいが近くに営巣しても寛容で,集団繁殖することもある。小型哺乳類を主食とし,昆虫類や爬虫類,小鳥なども食べる。停空飛翔をして,あるいは見晴らしのよい場所に留まって獲物をねらう。(→タカ猛禽類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チョウゲンボウ」の意味・わかりやすい解説

チョウゲンボウ
ちょうげんぼう / 長元坊
kestrel
[学] Falco tinnunculus

鳥綱タカ目ハヤブサ科の鳥。ヨーロッパの大部分と、砂漠を除いたアフリカの大部分、アジアの中部および南部で繁殖し、冬に移動するものもある。日本では本州中部および北部で繁殖し、冬は全国的にみられる。全長約30センチメートルの小形のハヤブサである。雄の頭部と尾は灰色、体の上面は茶褐色、下面は淡黄色で、いずれにも黒い斑点(はんてん)がある。雌は赤褐色で、下面は淡い。川沿いや海岸の断崖(だんがい)のくぼみや穴の中に4、5個の卵を産み、秋から冬にかけては、農耕地、埋立地、川原、飛行場などの開けた所にすむ。飛びながらノネズミやバッタを探し、みつけると停空飛翔(ひしょう)をしてねらいをつけ、急降下してとらえる。キッキッキッキッと鳴く。長野県中野市にある十三崖のチョウゲンボウ繁殖地は、1953年(昭和28)に国の天然記念物に指定されている。

[高野伸二]

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百科事典マイペディア 「チョウゲンボウ」の意味・わかりやすい解説

チョウゲンボウ

ハヤブサ科の鳥。翼長25cm。背面は赤褐色で黒点が散在,頭と尾は灰青色。ユーラシア大陸中・南部,アフリカで繁殖。日本では全国に分布し,河川や海岸の岩穴,橋桁などに巣を作ることが多い。冬は海岸や耕地にも現れる。空中の1ヵ所にとどまってはばたき,急降下をして獲物を捕らえる。ネズミ類,小鳥等を好む。
→関連項目ハヤブサ(隼)

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