チングルマ(読み)ちんぐるま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チングルマ」の意味・わかりやすい解説

チングルマ
ちんぐるま
[学] Sieversia pentapetala (L.) Greene

バラ科(APG分類:バラ科)の落葉小低木。マット状に群生し、茎の下部は分枝して地表をはい、上部は直立または斜め上に伸び、高さ約10センチメートルとなる。葉は7~11枚の小葉からなる羽状複葉、革質で表面は光沢がある。6~8月、約10センチメートルの花柄に、径2~3センチメートルで白色の5弁花を1個開く。雄しべ、雌しべともに多数。花期後、花柱は伸長して3センチメートルに達し、羽状の長い毛が生える。果実痩果(そうか)。中部地方以北の本州、北海道高山のやや多湿地に生え、樺太(からふと)(サハリン)、千島列島カムチャツカアリューシャン列島に分布する。名は、愛らしい花形に由来するチゴグルマ(稚児車)が転訛(てんか)したものといわれる。高山植物として一般的な植物で、秋の紅葉はみごとである。

 チングルマ属はアジア大陸北部からアリューシャン列島に2、3種分布し、果実時のようすはチョウノスケソウ属に似る。ダイコンソウGeumと同属とする説もある。

[鳴橋直弘 2020年1月21日]


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改訂新版 世界大百科事典 「チングルマ」の意味・わかりやすい解説

チングルマ
Geum pentapetalum Makino

高山に生えるバラ科の小低木で,ダイコンソウ属の植物であるが,それとは別属にされることもある。高さ10cm以下,茎は地をはい,先に葉を叢生(そうせい)する。葉は羽状複葉で,小葉は4~5対,楕円形から倒卵形常緑でやや堅く,縁には切れ込み状の鋸歯がある。7~8月,10cmほどの花茎の先に,円形の5枚の花弁をもった径2~3cmの白色の花をつける。チングルマの名は,この花を車に見たて,稚児(ちご)のようにかわいいので,稚児車から変わったともいわれる。おしべ,めしべとも多数あり,果実が熟すると,めしべの花柱は,3cmほどに伸びて糸状になり,白い毛をつけて,羽毛のように見える。本州中部以北と北海道に生じ,千島,サハリンなどにも分布する。高山植物としてよく知られており,ややしめったところを好む。時に山草として栽培される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チングルマ」の意味・わかりやすい解説

チングルマ(稚児車)
チングルマ
Geum pentapetalum

バラ科の小低木。日本の本州中部以北,サハリン,千島,カムチャツカ,アリューシャンに分布し,日本では高山帯の日当りのよいところに群落をつくって生える。茎は横にはい,先端部は立上がって小型の奇数羽状複葉が集ってつく。托葉は線形で小さく,ときには短毛をもつ。夏に,茎頂から長い花柄を伸ばし,直径 2~3cmの梅形の白色花をつける。花弁は 5枚,おしべ,めしべはともに多数ある。果実は痩果で長い白毛を生じ,特に花柱は花後に長く伸びる。和名はこの長い花柱をもった果実が風になびくところから稚児車の転訛したものといわれる。

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百科事典マイペディア 「チングルマ」の意味・わかりやすい解説

チングルマ

イワグルマとも。バラ科の常緑小低木。北海道,本州中部以北の高山草原や湿原に群生する。茎は細く,よく分枝して地をはい,密に葉をつける。葉は7〜9個の小葉からなる羽状複葉,上面は深緑色で光沢がある。夏,15cm内外の花茎の頂に径2.5cm内外の白色5弁花を単生。花後に長い羽毛状の白毛のある分果を結ぶ。名は稚児車の転じたものとされる。
→関連項目高山植物

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