つるぎ

改訂新版 世界大百科事典 「つるぎ」の意味・わかりやすい解説

つるぎ[町]

徳島県中部,美馬郡の町。2005年3月貞光(さだみつ)町,半田(はんだ)町と一宇(いちう)村が合体して成立した。人口1万0490(2010)。

つるぎ町南部の旧村。美馬郡所属。人口1547(2000)。吉野川の支流貞光川上流域を占め,剣山北斜面に位置する。四周を急峻な剣山地に囲まれた典型的な山村。過疎化が激しく,1965-80年の15年間に人口の約5割が流出した。1975年自然休養村の指定をうけ,観光農業の発展をめざしている。主要作物は柿,栗,シイタケ,茶などで,特に柿は有名。国道438号線が走る。剣山の観光開発は近年急速に進み,国民宿舎剣山荘(現,ラフォーレつるぎ山),県民の森,県営剣山スキー場(2008年現在,つるぎ町営だが,休業中)などがあり,観光客でにぎわう。北東端の貞光川には県天然記念物の土釜がある。

つるぎ町北東部の旧町。美馬郡所属。人口5963(2000)。吉野川中流部南岸にあり,貞光川が中央部を北流し,山地が町域の大部分を占める。市街地は吉野川と貞光川の合流点近くの河岸段丘上に発達した谷口集落で,古くから県西部における商業の中心地として栄えた。江戸時代中期,刻みタバコ製造が盛んとなり,1897年には県下初のタバコ収納所と刻みタバコ工場が誘致された。かつてタバコの農業生産額に占める割合は高かったが,近年はブロイラー生産が農業の主流をなし,米作果樹栽培も行われる。貞光川に沿う一宇街道は剣山への主要ルートの一つで,夏は登山口としてにぎわう。貞光川上流の端山(はばやま)地区にある鳴滝は県下一の落差(85m)を誇る。国道438号線が通り,JR徳島線が通じる。

つるぎ町北西部の旧町。旧美馬郡所属。人口5590(2000)。吉野川中流南岸にあり,吉野川の支流半田川流域を占める。JR徳島線が通じる。市街地は半田川と吉野川の合流点近くの小盆地に発達した谷口集落で,古くから漆器とそうめんの特産が知られる。元禄年間(1688-1704)に始まったとされる半田塗は,徳島藩の手厚い保護と奨励により発展し,明治中期の最盛期には木地師150戸,磨師100戸,関連戸数130戸を数えた。現在は衰退し,民芸品としてのみ命脈を保っている。江戸時代末期に始まった半田そうめんの製造は町の中心産業になっている。農業は茶,カキの栽培が行われている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「つるぎ」の意味・わかりやすい解説

つるぎ(町)
つるぎ

徳島県中西部、美馬(みま)郡にある町。2005年(平成17)、美馬郡半田町(はんだちょう)、貞光町(さだみつちょう)、一宇村(いちうそん)が合併して成立。町域は南北に長く、吉野川中流の南岸から剣(つるぎ)山(1955メートル)の北麓(ろく)にかけて広がる。東部を貞光川、西部を半田川が北流し、吉野川に合流する。山間部が多く、とくに南部の一宇地区では過疎化の進行が著しい。吉野川沿いにJR徳島線と国道192号、貞光川沿いに国道438号が走る。剣山登山玄関口の一つで、町名も剣山に因む。南部は剣山国定公園の指定域。

 江戸時代には葉藍、葉タバコといった商品作物栽培や紙漉が盛行したが、明治時代後半になると葉藍栽培は衰退、かわって養蚕が盛んとなり、大正時代には貞光に製糸工場も設置された。しかし、近年は養蚕、葉タバコ栽培ともに低迷。現在はカキ、ユズなどの果樹や茶の栽培、ハウス園芸、軽量多品目の山間野菜の栽培、養鶏などが盛んである。

 貞光川、半田川の河口近くに形成される貞光市街、半田市街はそれぞれの谷口集落として発達。江戸時代に徳島藩の代官所が置かれた貞光の商圏は、近代以降、貞光川流域ばかりだけでなく、吉野川の対岸にも及んだ。現在、貞光市街には往時の繁栄を伝える「うだつ」(隣家の境界に設けられた土造りの防火壁)のあがった建造物が約50軒あり、なかに2段式の「うだつ」を構えた町屋もあって、「二層うだつの町並み」として知られている。半田地区では江戸時代から漆器製造、素麺製造などの手工業が発達。漆器製造は昭和40年代半ばにいったん途絶えたが、その後伝統工芸品として復活、「手延べそうめん」は全国ブランドに成長している。一宇蔭(かげ)の赤羽根大師のエノキ(国指定天然記念物)は幹回り日本一ともいわれ(2022年樹体の3分の2ほどが倒壊)、同じく一宇地区にあって四国一、二を争う白山神社のモミ、桑平(くわだいら)のトチノキ、奥大野(おくおおの)のアカマツ(いずれも県指定天然記念物)などとともに、「巨樹王国」一宇を代表する樹木である。桑平には剣山スキー場がある。面積194.84平方キロメートル、人口7715(2020)。

[編集部]


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百科事典マイペディア 「つるぎ」の意味・わかりやすい解説

つるぎ[町]【つるぎ】

徳島県中西部,美馬郡の町。北部を吉野川が流れる。2005年3月美馬郡半田町,貞光町,一宇村が合併し町制。JR徳島線,国道192号線,438号線が通じる。194.84km2。1万490人(2010)。

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