日本大百科全書(ニッポニカ) 「テクノストラクチュア」の意味・わかりやすい解説
テクノストラクチュア
てくのすとらくちゅあ
technostructure
専門技術者や企業経営の専門家など、いわゆるテクノクラートの組織という意味である。現代の大企業において、意思決定の権限を現実に掌握している人々を示す概念として、J・K・ガルブレイスが『新しい産業国家』(1967)で用いたもので、彼の造語である。
現代の大企業では、株式所有が分散して、個人の大株主あるいは株主集団による企業支配力は低下し、いわゆる「所有と経営の分離」が進んでいる。また、高度の技術進歩と生産単位の巨大化によって、企業の経営には、個人の能力の及びえないほどに高度で専門的な知識や判断力に基づく計画性が要求されている。ガルブレイスは、こうした現実認識から、企業における意思決定は、株式所有の有無にかかわらず、最新の技術や経営に関する高度な知識や能力ないしは経験を備えた、おのおのの分野の専門家が、集団的に担うことになる、と考えたのである。このようなテクノストラクチュアによる意思決定権の掌握は、企業だけではなく、行政や軍事などにも及ぶ。そうしたテクノクラートたちによって導入される計画化は、資本所有者たちの個別的利益からはある程度自立しており、その結果、従来の、資本の所有と非所有の関係を軸にした社会とは異なった社会構造が成立するものと、彼は考えているのである。
[佐々木秀太]