テナント(読み)てなんと(英語表記)Smithson Tennant

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テナント」の意味・わかりやすい解説

テナント(Charles Tennant)
てなんと
Charles Tennant
(1768―1838)

イギリスの漂白技術者。エアーシャーのオーキルトリーに生まれる。初等教育を受けたのち、製糸・漂白について修業、その後数人共同で漂白工場を創設した。当時の漂白方法は天日さらし法で、数週間から数か月を要したが、産業革命のさなかにあっては、この方法では大量の織物を仕上げるには貧弱すぎた。テナントは1789年塩素と消石灰による液体漂白剤製造法に関する特許を、1799年には乾燥した粉末漂白剤製造に関する特許を取得した。粉末漂白剤の出現は輸送の問題を解決し、大量生産も可能にした。この間、1790年にはグラスゴー近くのセントロロックスに工場を建設し、初年度に50トンの粉末漂白剤を製造し、その後1830年には年間1000トンの製造を可能にした。また1820年代に鉛室法による硫酸の製造、ルブラン法によるソーダの製造を始め、ヨーロッパ最大の化学工場にまで発展させ、イギリスの産業革命に大きく貢献した。

[雀部 晶]


テナント(Smithson Tennant)
てなんと
Smithson Tennant
(1761―1815)

イギリスの化学者。ヨークシャーのセルビイに生まれる。エジンバラケンブリッジの両大学で医学を学ぶ。ケンブリッジ大学化学教授(1813)。ダイヤモンド木炭燃焼から生じる炭酸ガス量を比較し、両者の化学的同一性を証明した(1796)。また、1804年に白金鉱石の黒い王水不溶物から2種の新金属を発見し、それぞれ化合物の性質からイリジウムギリシア語の「虹(にじ)」から)、オスミウム(ギリシア語の「臭(にお)い」から)と命名した。1800年からW・ウォラストンと白金製品を販売した。フランスに旅行中、母親と同じく乗馬事故で死去した。

[肱岡義人]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テナント」の意味・わかりやすい解説

テナント
Tennant, Smithson

[生]1761.11.30. ヨークシャー,セルビー
[没]1815.2.22. フランス,ブーローニュ
イギリスの化学者。エディンバラ大学医学部で J.ブラックに学んだのち,ケンブリッジ大学に移り,1796年医学の学位取得。ケンブリッジ大学化学教授 (1813) 。スウェーデン,フランスなどを広く旅行。ダイヤモンドが純炭素であることを証明し,また白金鉱の精製過程で生じる残留物から,新元素イリジウムオスミウムを発見,命名した。ロイヤル・ソサエティ会員 (1785) 。ロンドン地質学協会創立会員 (99) 。 1804年コプリー・メダル受賞。

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