ディックス
Otto Dix
生没年:1891-1969
ドイツの画家。ウンテルムハウス(ゲーラ)生れ。第1次大戦中の初期作品には,悲惨と葛藤する生命の美が感じられる。それは,戦後傷痍軍人や娼婦などを描いた極度にデフォルメされたダダ的作品になり,さらに《芸術家の両親》(1924)などの市民像で精密な性格描写の画風に変わる。《塹壕》や50枚の連作銅版画《戦争》(1924)は,人間と社会の醜悪を暴く代表作で,デフォルメと精密描写による彼の新即物主義には,バルドゥングなどドイツ中世美術にみられる表現主義的リアリズムの影響がある。
執筆者:土肥 美夫
ディックス
Dorothea Lynde Dix
生没年:1802-87
精神病院の設立・改善のために働いたアメリカの改革家。教師,著作活動などに従事した後,1841年,刑務所の日曜学校教師をした際,精神病者の多くが刑務所に収容されていることを知り,公立精神病院の設立運動を開始した。各地で精神病者の実態調査,病院設立の立法活動を行い,32の州立精神病院設立に直接寄与した。彼女の影響力は広範に及び,43年から80年までに全米の精神病院数は13から123に増えた。
執筆者:有賀 夏紀
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ディックス
Dix, Otto
[生]1891.12.2. ゲーラ,ウンテルムハウス
[没]1969.7.25. コンスタンツ,ジンゲン
ドイツの画家,版画家。装飾画の修業をしたのち,1914~18年第1次世界大戦に従軍。帰還後ドレスデンの美術学校で R.ミュラーに師事。 19年ドレスデン分離派の創立者の一人となる。 23年ダダに転じ,次いで G.グロッスとともにノイエ・ザハリヒカイトの指導者として活動。 26~33年ドレスデンの美術学校教授。 35年以後ナチスの迫害を受けて制作を中絶。第2次世界大戦後はヘメンホーフェンに定住し,主として宗教的主題の作品を制作,再び表現主義的傾向を強めた。
ディックス
Dix, George Eglinton Alston (Gregory)
[生]1901.10.4.
[没]1952.5.12.
聖公会ベネディクトゥス会の修道士,礼拝学者。ドム・グレゴリー・ディックスの名で知られる著名な論争家であり,また礼拝学の発達に貢献した。主著"The Treatise on the Apostolic Tradition of St. Hippolytus of Rome" (1937) ,"A Detection of Aumbries" (42) ,"The Question of Anglican Orders" (44) ,"The Shape of the Liturgy" (45) 。
ディックス
Dix, Dorothea Lynde
[生]1802.4.4. メーン,ハンプデン
[没]1887.7.17. ニュージャージー,トレントン
アメリカの女性社会改良運動家。 1821~35年ボストンで女子教育のため学校を開き,41年刑務所の日曜学校で教え,精神障害者の囚人の存在に心をゆさぶられた。以後彼らの福祉向上のため調査を行いマサチューセッツ州議会の報告書を提出して,精神障害者のための医療と更生のため尽力した。彼女の努力によりアメリカのみならずヨーロッパでもこの問題への関心が高まった。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内のディックスの言及
【新即物主義】より
…そこには戦後社会の混乱の中で見いだされた孤独な事物体験,人間疎外,生活態度などが反映している。ハルトラウプは新即物主義を[グロッス],[O.ディックス],ベックマンMax Beckmann(1884‐1950)らの時代批判的な左派または〈真実主義Verismus〉とシュリンプGeorg Schrimpf(1889‐1938),カーノルトAlexander Kanoldt(1881‐1939)らの右派または新古典主義とに分けている。人間をマネキン風あるいは獣的に描くグロッス,デフォルメされた戦争画や娼婦像で人間の醜悪を暴くディックス,からみあう群像やうつろな事物の静物画で世界に投げ込まれた人間の不安な実存と孤独を表現するベックマンなどの批判的ないし実存的リアリズムに対し,右派の風景や人物画には時代を超えた牧歌的雰囲気があり,むしろ新ロマン派と呼べるような審美性が漂っている。…
【ワイマール文化】より
…しかし大戦後それは革命的連帯の運動に〈高揚〉してから,予感と不安に満ちたクールな〈魔術的リアリズム〉に変貌していく。O.ディックスの三枚絵《大都会》(1928)や《戦争》(1932)は終末論的ですらある。ベックマンの超越論的即物性を経て,ホーファーCarl Hofer(1878‐1955)はすでに実存性にまで到達した。…
※「ディックス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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