日本大百科全書(ニッポニカ) 「デクロワゾー石」の意味・わかりやすい解説
デクロワゾー石
でくろわぞーせき
descloizite
鉛と亜鉛の含水バナジン酸塩鉱物。デクロワゾー石系を構成する。デクロワゾー鉱という和名が用いられることもある。近似的にはコニカルコ鉱などと同構造。自形は八角形の底面の現れる比較的低い斜方複錐台(ふくすいだい)やこれがやや高くなったものなどのほか、a軸に扁平(へんぺい)で八角形の断面をもった短柱状になることもある。
各種鉛鉱床の酸化帯中に産し、おもに鉛の二次鉱物とかなり複雑な組合せをつくることが多い。日本では山口県山口市八坂鉱山(閉山)や福岡県遠賀(おんが)郡岡垣(おかがき)町三吉野(みよしの)鉱山(閉山)などから記載されている。ただし、これまで確認された産地でバナジンの硫化物のような初生鉱物は発見されておらず、硫化物でも酸化物でも鉛とバナジンを同一鉱物中に含む例は未知なので、褐鉛鉱のような二次鉱物が母鉱物となったか、あるいはデクロワゾー石自身が初生鉱物である可能性はぬぐいきれない。
共存鉱物は、白鉛鉱、黄鉛鉱、褐鉛鉱、緑鉛鉱、ミメット鉱、モットラム石など。同定は皮膜では赤褐、橙(とう)褐、黄褐色、結晶ではこれらの色調が暗色化し、ときに黒に非常に近くなる色であることによる。一見金属光沢に見える脂肪光沢。しかし条痕(じょうこん)は明らかに褐色系統の色をもつ。命名はパリ大学アルフレド・ルイ・オリビエ・ルグラン・デ・クロワゾーAlfred Louis Olivier Legrand Des Cloizeaux(1817―1897)にちなむ。
[加藤 昭 2017年12月12日]