デルフィニウム(読み)でるふぃにうむ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デルフィニウム」の意味・わかりやすい解説

デルフィニウム
でるふぃにうむ
[学] Delphinium

キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)デルフィニウム(オオヒエンソウ)属の総称。英名ラークスパーlarkspur。直立性の多年草または一年草。葉は有柄で3出複葉または掌状。花は総状、穂状、円錐(えんすい)花序につき、おもに青紫、赤紫、淡紅、白色などの花を開く。萼片(がくへん)は5枚、花弁状で、後部のものは伸びて距(きょ)となる。花弁は2~4枚、上部の2枚は萼距の中にある。属名はギリシア語のdelphin(イルカ)により、花の形からついた。山地に生え、アジア、ヨーロッパ、北アメリカに約200種分布し、園芸品種は数千種に上る。日本では秋播(ま)き一年草のヒエンソウ(飛燕草)Consolida ajacis (L.) Schur(D. ajacis L.)が多くつくられていたが、近年はD. elatum L.、D. formosum Boiss. et Huet.、D. grandiflorum L. var chinense Fisch、などを材料として育種した八重咲きの高性種(高さ2メートル、花穂は長さ1メートル)や鉢物用の矮性(わいせい)種が盛んに栽培されるようになった。土質排水のよい肥沃(ひよく)な弱アルカリ性土壌が適する。日光に当てるとよい。本属植物はデルフェニンほかのアルカロイドを含むものがある。

[鈴木龍二 2020年3月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デルフィニウム」の意味・わかりやすい解説

デルフィニウム
Delphinium; larkspur

キンポウゲ科デルフィニウム (オオヒエンソウ) 属の総称で,北半球の温帯各地とアフリカの山岳部に 200種以上が分布する。一,二年草または多年草。多くの品種が切り花や鉢植え,花壇用に栽培されている。葉は掌状に裂け,対生する。花は左右総称で,直立する総状花序を形成。5枚の花弁状の部分は萼片 (がくへん) にあたる。デルフィニウム・エラツム D.elatumを中心にいくつかの原種を交雑し,たくさんの園芸品種が作出された。花色は青色を中心に,空色,淡青色,紫色,紫紅色,赤色,桃色,白色のほか,黄色系の品種も生れている。花穂が 40cm以上になる品種もあり,壮大で美しい。夏に冷涼で乾燥した気候が適している。日本の夏の気候は元来あまり適さないが,夏期冷涼な地域ではみごとな花を見ることができる。種子は秋にまく。多年草系の種類は株分けでふやすことができる。

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