トウゾクカモメ(読み)とうぞくかもめ(その他表記)skua

翻訳|skua

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トウゾクカモメ」の意味・わかりやすい解説

トウゾクカモメ
とうぞくかもめ / 盗賊鴎
skua
jaeger

広義には鳥綱チドリ目トウゾクカモメ科に属する海鳥総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Stercorariidaeの仲間は、全長45~65センチメートル、外形カモメ類に似るが、初列風切(かざきり)の基部が白く、繁殖羽では中央尾羽が長く伸びる種があることなどが異なる。飛翔(ひしょう)性のグループで、ほかのカモメ・アジサシ類を追い襲って、餌(えさ)を吐き出させ、それを空中で受け止めて横取りする習性をもつことから、この名がつけられた。

 世界に5種いて、すべて極地とその周辺で繁殖する。最大種はオオトウゾクカモメStercorarius skuaで、北極に近いアイスランド、イギリス北部で繁殖し、南極周辺の島でも多数繁殖する。南極大陸で営巣する種ナンキョクオオトウゾクカモメS. maccormickiは、夏季、北太平洋に渡ってくる。残る3種は北極ツンドラ湿原や沿岸で繁殖し、それぞれに特徴のある中央尾羽をもつ。繁殖後、大陸沿岸沖合いを南に移動する長距離の渡りをし、南半球で越冬する。種のトウゾクカモメS. pomarinusシロハラトウゾクカモメS. longicaudusは内陸ツンドラで繁殖し、小形の哺乳(ほにゅう)類をとらえて食べる。タビネズミが大発生するとそこに集まって繁殖する。クロトウゾクカモメS. parasiticus海岸や沖に出て採食し、内陸湿地には入らない。自らも魚類をとらえるが、アジサシ類などから餌を横取りすることが多い。海上では群れることはなく、1羽ずつ分散して生活し、横取りするとき競争になるのを避けて、食物寄生の効率を高めている。これらトウゾクカモメ類には、胸から腹が白い淡色型と、全身が黒褐色の暗色型とがある。この羽色の多型現象は遺伝的で、中間型もみられる。しかし、似た羽色のものどうしがつがいになる傾向がある。その生態的な意味はよくわかっていないが、捕食略奪採餌(さいじ)法と関係していると考えられる。トウゾクカモメ類は、日本ではおもに春と秋の渡りのときに太平洋岸沖でみられる。

[長谷川博]広義には鳥綱チドリ目トウゾクカモメ科に属する海鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Stercorariidaeの仲間は、全長45~65センチメートル、外形はカモメ類に似るが、初列風切(かざきり)の基部が白く、繁殖羽では中央尾羽が長く伸びる種があることなどが異なる。飛翔(ひしょう)性のグループで、ほかのカモメ・アジサシ類を追い襲って、餌(えさ)を吐き出させ、それを空中で受け止めて横取りする習性をもつことから、この名がつけられた。

 世界に5種いて、すべて極地とその周辺で繁殖する。最大種はオオトウゾクカモメStercorarius skuaで、北極に近いアイスランド、イギリス北部で繁殖し、南極周辺の島でも多数繁殖する。南極大陸で営巣する種ナンキョクオオトウゾクカモメS. maccormickiは、夏季、北太平洋に渡ってくる。残る3種は北極ツンドラ湿原や沿岸で繁殖し、それぞれに特徴のある中央尾羽をもつ。繁殖後、大陸沿岸沖合いを南に移動する長距離の渡りをし、南半球で越冬する。種のトウゾクカモメS. pomarinusとシロハラトウゾクカモメS. longicaudusは内陸ツンドラで繁殖し、小形の哺乳(ほにゅう)類をとらえて食べる。タビネズミが大発生するとそこに集まって繁殖する。クロトウゾクカモメS. parasiticusは海岸や沖に出て採食し、内陸湿地には入らない。自らも魚類をとらえるが、アジサシ類などから餌を横取りすることが多い。海上では群れることはなく、1羽ずつ分散して生活し、横取りするとき競争になるのを避けて、食物寄生の効率を高めている。これらトウゾクカモメ類には、胸から腹が白い淡色型と、全身が黒褐色の暗色型とがある。この羽色の多型現象は遺伝的で、中間型もみられる。しかし、似た羽色のものどうしがつがいになる傾向がある。その生態的な意味はよくわかっていないが、捕食、略奪の採餌(さいじ)法と関係していると考えられる。トウゾクカモメ類は、日本ではおもに春と秋の渡りのときに太平洋岸沖でみられる。

[長谷川博]

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改訂新版 世界大百科事典 「トウゾクカモメ」の意味・わかりやすい解説

トウゾクカモメ (盗賊鷗)
skua
jeager

チドリ目トウゾクカモメ科Stercorariidaeの海鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。この科はふつう4種に分類されるが,いずれも日本にも分布し,外海や沿岸で生活する。体はカモメ類に似てがんじょうで強く,翼も長めで先がとがっている。しかし頭頂と背面が黒褐色でカモメより黒っぽく見え,尾が長い。オオトウゾクカモメ以外の3種は腹が白いが,トウゾクカモメとクロトウゾクカモメには腹の黒い暗色型がある。くちばしは先がかぎ状に曲がっている。脚には水かきがあり,泳ぐことは巧みである。極地に近い海岸,島,ツンドラなどの地上に簡単な巣をつくり,1腹2個の卵を産む。両親で4週間ほど抱卵し,雛は6~8週間で巣立つ。ネズミ類や他の鳥の雛などの動物を食べる。海上では他の鳥を襲って,もっている餌を横取りしたり,吐き出させたりする。このため,〈トウゾクカモメ〉の名がある。

 トウゾクカモメStercorarius pomarinus(英名pomarine skua,pomarine jeager)は全長約52cm。中央の1対の尾羽が長く,途中でねじれている。北半球の北部で繁殖し,冬期には南半球に渡る。シロハラトウゾクカモメS.longicaudus(英名long tailed skua)とクロトウゾクカモメS.parasiticus(英名arctic skua)もトウゾクカモメによく似た鳥で,北極圏で繁殖し,南半球で越冬する。3種とも日本では春秋の2回,近海を通過するものが見られるが,春期にその数が多い。オオトウゾクカモメCatharacta skua maccormicki(英名great skua)は全長約60cm。全身暗褐色で,翼に白色部があり,飛翔(ひしよう)時によく目だつ。南極大陸沿岸で繁殖し,北太平洋北部にまで渡る。このほかに,北大西洋北部の島で繁殖するもの,また南極海周辺の島で繁殖するものがあり,これらを別種として取り扱う学者もある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トウゾクカモメ」の意味・わかりやすい解説

トウゾクカモメ
Stercorarius pomarinus; pomarine skua

チドリ目トウゾクカモメ科。全長 65~78cm(中央の長い尾羽を含む)。体形はカモメに似ているが,尾羽は中央の 2枚がほかより長くて先がふくらみ,特殊な形をしている。頭と背面は黒褐色で下面は白い。頸は黄色。胸に黒帯がある。全身がほとんど暗褐色の黒色型もある。ユーラシア大陸と北アメリカ北部の北極圏ツンドラ地帯や島嶼で繁殖する。非繁殖期は赤道を越えて南半球まで移動する鳥もいる。日本では春と秋に旅鳥(→渡り鳥)として近海を通過するものが多い。や爪は猛禽類のように鋭く,すばやい動きで魚のほか鳥やネズミなどを捕食する。ミズナギドリ,カモメ,アジサシなどの群れのなかに入り,それらの鳥を襲って,食べた餌を吐き出させて奪う習性もあり,和名の由来となっている。日本ではほかに近縁のオオトウゾクカモメ,クロトウゾクカモメ S. parasiticus,シロハラトウゾクカモメ S. longicaudus が観察され,形態も習性も似ている。

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百科事典マイペディア 「トウゾクカモメ」の意味・わかりやすい解説

トウゾクカモメ

トウゾクカモメ科の鳥。翼長35cm。腹面や頸(くび)が白い淡色型,全身暗褐色の暗色型とがある。ユーラシア大陸および北米の極北部で繁殖し,冬は南へ渡る。日本では旅鳥として4〜5月ころ,北海道,本州北部の太平洋沖合にみられるが,陸地に近づくことはまれ。ミズナギドリ類やカモメ類など他の海鳥を攻撃し,飲んだ魚を吐き出させて食べるのでこの名がある。近縁種にオオトウゾクカモメ,クロトウゾクカモメ,シロハラトウゾクカモメがある。

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