トップ・マネジメント(読み)とっぷまねじめんと(英語表記)top management

翻訳|top management

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トップ・マネジメント」の意味・わかりやすい解説

トップ・マネジメント
とっぷまねじめんと
top management

企業組織の最上層部を構成して、経営活動の全体的、基本的、長期的、政策的な意思を決定し、活動全般について指揮・監督を行う人ないし機関、もしくはそれらの機能をいう。しかし、トップ・マネジメントという用語は通俗語の色彩が強く、厳密さを欠き、内容についても広狭諸説がある。経営学的には、次の二つの機能を基本とし、それらの担当者もしくは担当機関をもってトップ・マネジメントとする。第一は、戦略経営層strategic managementとよばれる最上層機能である。それは、諸種の利害者集団(ステークホールダー)の貢献を結集して一つの社会的制度となっている企業の経営を関係者の支持によって付託され、その付託にこたえるように企業を基本的に方向づける機能である。この機能内容は、臨時的機能と経常的機能に二大分される。前者はさらに、設立解散、合併、改組などに関する組成機能と、主要役職者の人事に関する最高人事機能に分けられる。後者すなわち経常的機能は、企業の経営に関する基本的意思決定であり、具体的には経営理念・経営目標の明確化、経営戦略の策定経営資源配分、基本組織の設計、長期計画の決定などからなる経常的意思決定と、業績の確定・評価・開示や成果配分の決定などからなる評価的意思決定の2分野から構成されている。このような戦略経営層の諸機能のうち、活動中の企業にとって重要なものは最高人事と経常的意思決定である。所有と経営の分離した現代企業では、これらの機能は取締役会によって担当されるのが原則である。

 トップ・マネジメントの第二は、全般管理層general managementとよばれる執行統括機能である。それは、戦略経営層による諸決定の枠内で最効率的に決定内容を実現するよう、執行活動全体を計画、指揮、調整し統制する機能である。この機能の担当機関は企業の規模によって種々の型がある。小規模企業では、戦略経営層の担当機関である取締役会の構成員(取締役)がそのまま全般管理者を兼任する。規模の拡大により、取締役のなかから代表者代表取締役=社長)を選任してそれに全般管理をゆだねる社長単独責任型、社長を含めた若干名の集団による集団指導型が現れる。日本では常務会制度が多用される。それは、形のうえでは集団指導型に近いが、実態は社長単独責任型の補強である。日本のトップ・マネジメントは、社長によって代表されているといえる。

[森本三男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トップ・マネジメント」の意味・わかりやすい解説

トップ・マネジメント
top management

企業の最高首脳部であり,基本的,全般的経営管理職能のにない手のこと。すなわち基本方針を決定し,経営計画を立て,これに対する組織,調整,動機づけ,統制を担当する者をいう。 (1) 取締役会,社長,部門長までを含む広義の考え方,(2) 社長と部門長だけを含む考え方,(3) 社長,副社長や,その協議協力機関としての常務会を含め,全般的管理機関だけをいう考え方がある。取締役会は基本的管理職能を担当する機関,常務会は全般的管理を担当する機関と分けて考えられるが,日本では内部重役が大部分であるから,常務会が基本的管理と全般的管理を担当していることが多く,社長,副社長,常務会をトップ・マネジメントと考えるのが一般的である。

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百科事典マイペディア 「トップ・マネジメント」の意味・わかりやすい解説

トップ・マネジメント

会社の最高経営者層。社長など取締役会を中心とする総括経営者層と,その下で各部門を担当する部門経営者層から構成。会社の基本方針の決定,総合的観点からの計画・組織・統制など全般的管理についての意思決定職能をもつ。→常務会
→関連項目経営管理ミドル・マネジメント

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のトップ・マネジメントの言及

【管理職】より

… 組織規模の拡大は,また管理者層にも作用し,意思決定の垂直的専門化をもたらす。組織構造を意思決定の垂直的専門化の観点から見れば,トップ・マネジメント=最高管理者(経営者)層,ミドル・マネジメント=中間管理者層,ロワー・マネジメント=下級管理者(監督者)層に分類される。狭義の管理職とは,通常,中間管理者層のことであり,ときには最高管理者層を含むことはあるが,下級管理者層を含むことはない。…

【経営・経営管理】より

…それが職能別部門組織の確立によって,第1次大戦ころまでに多くの企業が真の企業結合体になったのである。
[集権的機構と管理方式・管理技術]
 本社機構を核とする最高経営者層(トップ・マネジメント)は,各部門活動を調整,評価し,市場の動きと部門活動とを調整し,さらに企業全体の政策を決定する。最高経営者層は,長期的予測・判断に基づく企業資源の部門間配分と短期的変動に対応した企業資源の有効利用とについての意思決定を行った。…

【経営者】より

…したがってその階層的区別は,担当機能の相対的違いに基づいて,若干あいまいな内容を含みつつ行われている。あえていえば,最高管理機能を担当する最高管理層(トップ・マネジメントtop management)が経営者(層)部門であり,中間管理を担当する中間管理層(ミドル・マネジメントmiddle management)と課以下の現場管理を担当する下部(下級)管理層(ロワー・マネジメントlower management)が管理者(層)といえよう。この場合,最高管理の具体的内容は,ごく一般的にいえば,株主,消費者,労働組合,政府,行政組織,金融機関など,いわゆる企業の利害者集団との関係についての基本的な考え方を決定すること,企業規模との関連において企業の長期的存続を可能にするような戦略的決定を行うこと,各部門間の利害,意見対立を調整・裁定し企業の総合的な力を維持・発展させること,がそのおもなものであるといえよう。…

※「トップ・マネジメント」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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