トホーフト(読み)とほーふと(英語表記)Gerardus 't Hooft

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トホーフト」の意味・わかりやすい解説

トホーフト
とほーふと
Gerardus 't Hooft
(1946― )

オランダ理論物理学者。デン・ヘルデル生まれ。ユトレヒト大学に入学して、のちにノーベル物理学賞を共同受賞することになる新鋭の教授M・フェルトマンと出会い、指導を受ける。大学卒業後、素粒子が互いにどのような力を及ぼし合い、どのように物質を構成するかを説明する「標準理論」の精度を高めて、1971年にオランダで開かれた素粒子物理の国際会議で緊急に口頭発表した。当時は、実験装置の進歩でたくさんの新素粒子が発見されるようになっていたが、従来の標準理論では説明しきれない現象も多く出てきていた。そこで、標準理論を数学的により厳密にレベルアップした研究を発表したのである。この成果により、のちにヨーロッパ原子核研究機構(CERN(セルン))で発見されるW粒子Z粒子、アメリカのフェルミ研究所で発見されるトップ・クォークの質量の大きさなども、事前に正確に予測できるようになった。1972年にユトレヒト大学で博士号を取得、1977年から同大教授となる。フェルトマンとともに、「電弱相互作用の量子論的構造の解明」により1999年のノーベル物理学賞を受賞した。素粒子の理論については、同様に従来の理論の不備を補う手法を編み出した業績で、朝永振一郎(ともながしんいちろう)も1965年のノーベル賞を受賞している。

[馬場錬成]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トホーフト」の意味・わかりやすい解説

ト・ホーフト
't Hooft, Gerardus

[生]1946.7.5. デンヘルデル
オランダの物理学者。1972年ユトレヒト大学で物理学の博士号を取得,1977年同大学の物理学教授に就任。ユトレヒト大学大学院に在学中の 1969年当時,マルティヌス・J.G.フェルトマンのもとで自然界に働く力を統一する理論の研究に取り組む。1971年に,自然界に存在する四つの力のうち電磁気力電磁相互作用)と弱い相互作用を統一するワインバーグ=サラムの理論が,無限大となる量から有限な量を抜き出して計算することのできる「くりこみ可能性」(→くりこみ理論)を備えていることを数学的に証明した。さらに,弱い相互作用を媒介する粒子として存在が予測されていた W粒子と Z粒子の構造を解明した。素粒子論の研究に貢献したこの業績によって,フェルトマンとともに 1999年ノーベル物理学賞を受賞した。(→素粒子素粒子物理学

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