三角測量によって地球上の位置(経緯度)が定められた点。花崗岩(かこうがん)製の角柱が埋設してあり、その位置を示す。これを三角点標石というが、この標石が破損、亡失した場合にも位置がわかるように、標石の真下に花崗岩製の磐石(ばんせき)が埋設されている。三角点は互いに見通せる地点に選ぶため、山頂に設けることが多いが、見通しさえあればよいので、かならずしも最高点に設けるとは限らず、平地に設けられた三角点も多い。
三角点の経緯度は三角測量によって求められた測地経緯度であり、天文測量によって求めた天文経緯度とはかならずしも一致しない。この差を鉛直線偏差といい、日本では20秒以上の鉛直線偏差も観測されている。
日本の三角点は一等から四等までの等級に分けられ、それぞれ一等三角網、二等三角網などをつくり、上級の三角網のすきまを順次埋め、日本全国を均一な三角網で覆っている。このうち三等以上の三角点は旧陸軍の参謀本部陸地測量部によって5万分の1の地形図作成のための基準点として設置されたが、地殻変動の検知などにも利用されている。四等三角点は第二次世界大戦後、国土調査の基準点とするために測量が始められ、毎年設置点数は増加してきたが、電子基準点を用いたGNSS測量の普及に伴い、2010年代後半以降の新設点数は減少している。また花崗岩製の標石ではなく、ビルの屋上などには金属製の金属標が埋められる場合もある。
2016年(平成28)時点の三角点の等級別総数は、一等三角本点・補点975(平均辺長45キロメートル・25キロメートル)、二等三角点5034(平均辺長8キロメートル)、三等三角点3万1870(平均辺長4キロメートル)、四等三角点7万2005(平均辺長1.5キロメートル)となっている。
[尾崎幸男・辻 宏道 2016年11月18日]
三角測量などによってその位置が決められた地表の点。国土の精密な地形図を作成するためには,地球上での位置(経度,緯度,高さ)のわかった点が対象となる地域内に適当な密度で設置されている必要がある。三角点の第1の役割は地図作成のために位置の基準を与えることである。このほか,近年では三角点の位置を繰返し測量により求め,その位置変化のようすから地殻の変形を検知するなど地震予知の分野にも役立てられている。三角点の標識としては,ふつう石柱を地面に埋めたもの(標石)が用いられている。世界各国ではその国状や地形などを考慮してさまざまな規格の三角点を目的に応じて設置している。日本の場合は一等三角本点(332点),一等三角補点(637点),二等三角点(5056点),三等三角点(3万2770点),四等三角点(4万8376点。いずれも1982年3月現在)の5種類があり,建設省国土地理院により設置および維持管理が行われている。日本全土にはこれらの三角点が極力等密度になるように配置されており,一等三角本点間の平均距離は約45km,一等三角補点間は約25km,以下二,三,四等三角点間はおのおの8km,4km,2kmとなっている。日本中の一等三角本点すべてについて隣接の三角点どうしを線分で結ぶと,日本全土を覆う巨大な網ができあがり,その最小単位は三角形である。この網は一等三角網と呼ばれ国土の骨格をあらわすものである。日本では明治から大正にかけて,三角網の形を決定するための一等三角測量と三角網にスケールを与えるための基線測量が行われた。この二つの測量により日本列島の大きさと形が決定されたのであるが,さらに地球上における日本列島の位置を決定するために,三角網の中に特別な1点を選び,天文観測から経度と緯度が求められた。この点は測地原点と呼ばれ,東京都港区麻布台旧東京天文台構内にある。他の一等三角本点の位置は測地原点の経度,緯度をもとにして決められている。また一等三角補点,二,三,四等三角点の位置は,一等三角本点の位置を基準にして決められた。三角点の位置のデータは,三角点成果表という形で建設省国土地理院で管理されており,所定の手続きをとれば閲覧することができる。成果表には三角点の経度,緯度,高さのほか近くの三角点までの距離や方向などが記載されている。
執筆者:吉村 好光
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…地上に配置された複数の三角点を線分で結んで形成される網(三角網)において,各線分間の角(水平角)を測定して三角点の水平位置(経度,緯度)を求める測量。地球上での三角点の位置は,旧来経度,緯度,高さの3量によりあらわされるのが普通である。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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