日本大百科全書(ニッポニカ) 「トリフィル石」の意味・わかりやすい解説
トリフィル石
とりふぃるせき
triphylite
リチウムと鉄の無水リン酸塩鉱物。LiFe[PO4]の式からも類推されるように橄欖石(かんらんせき)と同構造。トリフィル石系を構成する。自形は多角形の断面をもつ斜方短柱状をなすが産出はまれ。花崗岩(かこうがん)質ペグマタイト中に産する。日本では茨城県かすみがうら市雪入(ゆきいり)が唯一の産地である。
共存鉱物は雪入産では藍鉄鉱(らんてっこう)、微斜長石、石英、白雲母(しろうんも)、水酸燐灰石(りんかいせき)など。世界各地のいわゆるリン酸ペグマタイトでは数多くの鉄やマンガンのリン酸塩が見られる。同定は雪入産の場合は藍色の藍鉄鉱で囲まれているので容易であるが、他の場合では、青色あるいは緑色を帯びた灰色、一方向の完全な劈開(へきかい)、比較的低い硬度など。条痕(じょうこん)が驚くほど淡く、無色に近い。命名はギリシア語triphylosに由来する。トリtriはLi、Fe、Pと3種の陽イオンを含むことにより、またフィルphylは鉱物族を意味する。
[加藤 昭]